大胆な設備投資と技術開発で「the metal solution」を展開

発展の節目は、真空熱処理炉、HIP、機械加工の導入

金属技研株式会社 代表取締役社長 長谷川数彦氏

金属技研株式会社は金属熱処理業の草分けとして1960年に創業。その後、幾多の技術的ブレイクスルーを繰り返し、現在では、「the metal solution」というスローガンのもと、金属の熱処理に加え、熱間静水圧プレス(HIP)、焼結、接合、溶接、超塑性成形、金属積層造形、解析・分析、機械加工など、多彩なプロセス技術を所有し、これらの卓抜な技術を組み合わせて、世界有数の金属加工の専業メーカーとして事業を展開している。業界トップレベルの先端技術を前面に押し出し、液晶・半導体分野から航空・宇宙分野まで、さまざまな産業分野において、高度な金属加工技術で貢献している。同社が成長を続ける原動力は、完成度の高い金属加工技術のノウハウに加え、先進的なニーズを先取りし、さらに新たな成長分野へ果敢に挑戦する姿勢にあるといえる。そこで、今回の「巻頭対談」は、同社代表取締役社長の長谷川数彦氏をゲストに迎え、同社の成長の過程、目指す将来像、期待される成長分野などをお聞きした。
●本稿では製品名等の登録商標の表記は割愛しています。
(※この記事は、2017年7月発行の 広報誌No.67に掲載されたもので、内容は取材時のものです。)

  • 聞き手
    株式会社アルバック 取締役会長*2017年7月1日付
    小日向 久治
  • ゲスト
    金属技研株式会社 代表取締役社長
    長谷川 数彦 氏

最初の節目はアルバック製真空熱処理炉の導入

産業分野売上比率

小日向: 金属技研さんは、アルバックの真空熱処理炉を長年にわたってご利用いただいています。また、今年秋に開所される土岐工場にも新たな真空熱処理炉を導入決定いただき、感謝を申し上げます。
今日は弊社の真空熱処理炉がどのようにお役に立っているのか、今後どのような真空熱処理炉をご希望なのかなど、お聞きしたいことが沢山ありまして、この対談を大変楽しみにして参りました。なお、研究開発の責任者である齋藤も同席させていただきますのでよろしくお願いいたします。
まず、金属技研さんの設立の経緯、発展の歴史と現在の事業体制についてお聞かせください。

長谷川: この57年の間に幾度か節目がありました。ヒストリーを簡単に説明しますと、弊社は1960年(昭和35年)に理化学研究所(以下、理研)の研究メンバー数人で発足しました。具体的には、1960年に理研が東京都豊島区駒込から埼玉県和光市に移転することになったのをきっかけに、研究成果を実際に社会で試そうということで、理研からスピンオフして金属技研を創立しました。
理研では磁性材料の熱処理とかチタンの研究をしていたのですが、事業としては磁性材料の熱処理が早く仕事に結びついたわけです。創立当時から、水素ガス雰囲気で金属部品の熱処理や、ろう付をおこなっていましたが、1970年(昭和45年)アルバック製の真空熱処理炉(FHH-45L)を導入、同時に当時防衛庁(現防衛省)の認定を取得し、本格的に近代熱処理分野に進出しました。これが最初の節目となるものです。

小日向: その真空熱処理炉は当時、弊社の工場長だった武井が関わったとのことです。その時期、彼は新たな真空熱処理炉を考えていました。一方、御社は、航空機分野に参入されるにあたって通常の雰囲気炉ではなく、真空熱処理炉の導入を計画されていたとのこと。しかし真空熱処理炉は高価なものですから導入をためらわれていた。そのときに御社に伺って「ぜひとも一緒に開発したい」という申し入れをしたところ、快諾を頂戴しました。それ以来、御社とアルバックとはずっとお付き合いすることになったのですね。

長谷川: ちょうど、航空機のエンジン修理を日本国内でやり始めた頃でした。新しい材料も出てはきていましたが、雰囲気炉では限界があったのです。それで真空熱処理炉を考えていたわけです。

小日向: おかげさまでアルバックにとっても最先端分野の真空熱処理炉に関わるきっかけになりました。感謝申し上げます。