大胆な設備投資と技術開発で「the metal solution」を展開

さらに拡大する航空機分野を支える中国・蘇州工場

小日向: 御社は中国蘇州にも展開されており、弊社の中国子会社で製造した真空熱処理炉もお使いいただき、大変有り難く存じます。中国でのビジネスの状況をお聞かせください。

長谷川: アルバックさんの真空熱処理炉は中国の子会社でも大いに活躍しています。航空仕様の製作要求に応えていただき、現在はNadcap認証炉として航空部品のほか、火力ガスタービンや医療装置など産業機器部品の熱処理やろう付に活躍しています。
メインのHIP装置においても、真空熱処理炉同様に航空認証炉として航空や火力ガスタービン、自動車部品などの精密鋳造品の欠陥除去に活躍し、中国における航空分野など特殊工程の専業委託メーカーとして事業展開しています。中国子会社も本格的な竣工から4年を経て、今年になってようやく黒字化が見え始めたところです。

小日向: 4年経って黒字がみえてきたということですが、弊社も蘇州の大型装置組み立て工場は5年かかりました。昨年ようやく黒字になりました。
足踏みの原因はいくつかありますが、一つはサプライチェーンの問題です。当初は我々の要求に合うようなものを作ってくれるところがなく、地道な努力の積み重ねで、品質向上を図りました。また技術者のレベルを上げるため、日本や韓国から出向いて教育しました。さらに一番大きなハードルは中国側のお客様ご自身が中国の品質を信用していない。日本の工場でつくってくださいという。しかしいつまでも日本でつくるわけにはいきません。「だったら中国で大型装置を実際に作り、お客様にその品質を見ていただこう」、ということにしました。そういう思い切ったことをやって、中国のお客様の信頼をいただいて、「これなら良いね」、ということでいまはフル稼働です。

長谷川: それは良かったですね。今では中国国内において知名度が格段に上がり、今後に大きな期待が持てますね。
航空機の世界需要は今後も拡大し、特に中国での伸びが大いに期待できます。中国政府と外資との思惑が一致し、合弁形式で欧米各社が現地生産を拡大させている状況です。
技術レベルの成長の度合いとコストの見合いから、中国が俄然注目を浴びています。ただし、特殊工程における品質と信頼は別次元で、この分野における本当に信頼できるローカル企業は見当たらず、台頭したとしても一朝一夕で成し遂げられるものではないと考えられます。航空対応の品質は他の産業においても信頼がありますので、他分野で多くのニーズが期待できることでしょう。

小日向: 日本との違いや苦労されていることは何でしょう。

長谷川: 弊社はクリーニング屋さんのように、お客様から品物を預かって、その場でお返しする業態ですから、現地で解決しなければなりません。加えてHIPを必要とする高付加価値品を中国で生産しようとする日系企業はほぼ皆無で、日本からの商権の引き継ぎや日本で取り引きのある日系企業からの仕事が当てにできませんでした。中国現地の技術力をアップするしか方法はありませんでした。
今の蘇州工場には、まだ半分の空きスペースがあります。今後の航空需要や発電関連の需要に加え、現地メンバーは更にエンジニアリング分野などへも積極的な営業活動を行っており、追加設備の要望も出てきています。

すべての行為が「the metal solution」に通じる

小日向: 長谷川社長が2005 年に就任されて、経営者としてどのようなことを一番に心がけていらっしゃいますか。また人材教育についてのお考えもお聞かせください。

長谷川: 環境問題に積極的に取り組んでいます。理念の「環境を大切にし、人を大切にする」は環境も人も密接に関係し、ある意味では同じことかもしれません。環境とは地球であり、社会であり、職場、生活なのです。それらに重要に関わっているのが人間で、最近よく見直されてきているのは、便利さよりも住みやすさとか生きやすさなどといわれています。社会の一員として、すぐに大きなことはできませんが、小さなことをできることから取り組むことで進めています。弊社の場合、熱処理業として発足しましたので、現場環境は他の業種に比べて、決して良い環境とはいえませんので、ISO14001の認証を全工場で取得し、働きやすい職場、環境づくりを常に意識し、会社の発展につながることを目指しています。これらを計画どおり実現するのは人であり、人は重要な役割を担っています。

小日向: 人に関しては経営の一番重要な要素ですからね。

長谷川: 社長に就任した時から内外に申し上げていますが、おっしゃる通り、人は重要な要素ですから、今も「企業は人なり、人重視」の経営をしています。これからもそうです。設備はお金を出せば望みのものは手に入りますが、人はそういうわけにはいきません。「志」のある人材を採用し、「みがき、育てる」ことが必要なのです。
会社説明会や面接のとき、弊社の保有する技術や事業内容、今後目指す方向、経営に対する「想い」などを話しますと共感してくれる学生も多いです。弊社の「理念」に共感してくれる学生を採用できることが理想ですね。そのようなことで「価値観」をキーワードに魅力的な会社づくりに努めています。
弊社のあるべき姿は「拡大」ではなくて「成長」に力点をおく、すなわち、今までできなかったことをできるようにする。内容の充実、言いかえれば社員一人ひとりの想いに立って経営するということです。
もちろん、ダイバーシティも常に意識しています。日本企業では非常に少ない高度外国人の採用や、女性の管理職やエンジニア、営業職への起用など、さまざまな文化の違いによる垣根を設けるつもりは全くありません。今行っているすべての行為が「the metal solution」に通じているという意識で経営しています。

小日向: 御社は、熱処理技術で世の中の役に立ちたいという思いで、技術者や研究者の皆様方が集まって会社を興された。アルバックも真空技術で戦後の産業復興に役立ちたいという気持ちで若い技術者が集まってできた会社です。御社の「the metal solution」と同じように、弊社は真空の総合技術で社会に貢献する「ULVAC SOLUTION」を掲げています。会社は社会の公器であり、単に利益を目指すのではなく、社会の役に立つことで会社を継続させるという思いです。私は会社の経営を任されて5年経ちますが、まず人の安全、地域の環境配慮、そして品質です。それをやることで利益は自然についてくると社員に言っています。いい仕事をまじめにしっかりやろう、それが、会社が継続していく原動力になる。そのためにはやはり「人」、長谷川社長と全く同じ思いです。

 

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