リークディテクタ
「HELIOT 900シリーズ」の開発

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1.はじめに

アルバックが1967年に初めてヘリウムリークディテクタ(helium leak detector, HLD)「DLMS」を販売開始し,その後,1995年にセレクトフリーという独自排気系の技術を用いて,世界で初めて完全自動化でグロスリークからファインリークまでのテストを可能とした「HELIOT 300シリーズ」1)を販売開始してから約20年が経過した.

(※この記事は、2015年6月発行のテクニカルジャーナルMo.79に掲載されたもので、内容は取材時のものです。)

 

「HELIOT 300シリーズ」の販売開始以降は,今までHLDを使用していなかったお客様向けの小型軽量化された「HELIOT 100シリーズ」2)や自動ヘリウムリークテスト装置専用の「HELIOT ZERO」3)など用途に合わせたシリーズ,及び汎用機の「HELIOT 700シリーズ」4)を開発してきた.

HLDの市場は,真空,自動車,冷凍,原子力業界から食品・医療品梱包業界等へと広がってきており,試験体,使用方法も多種多様になりつつある.そのような市場環境において,より早く,より微小な漏れを測定するという基本性能の向上と使いやすさの向上を目指した「HELIOT 900シリーズ」を開発したので紹介する.

リークディテクタHELIOT900の3つの特長

Figure 1 Appearance of a portable type.
Figure 1 Appearance of a portable type.
Figure 2 Appearance of a mobile type.
Figure 2 Appearance of a mobile type.

 

2.ラインアップ

「HELIOT 900シリーズ」の外観をFigure 1と2に,仕様一覧をTable 1に示す.従来の「HELIOT 700シリーズ」と同様に油回転ポンプ(W1タイプ;30L/min,W2タイプ;135L/min)とスクロール型ドライポンプ(D2タイプ;90L/min,D3タイプ;250L/min)を用意している.今回新たに,半導体製造装置・FPD製造装置向けに排気速度500L/minのスクロール型ドライポンプを搭載したD4タイプを追加した.排気速度が大きいW2,D3,D4タイプは,移動し易いモバイルカートを標準としている.

スニッファー法で使用する場合は,オプションのスニッファーユニットを接続すると使用できるようになり,真空法とスニッファー法の両方の使い分け可能な2 in 1構成となっている.

Table1: HELIOT900 Specification list

 

3.製品の特長

3.1 排気系及び分析管

Figure 3 Pumping curves compared to the existing models.
Figure 3 Pumping curves compared to the existing models.

早い時間でヘリウム漏れ試験を開始,または真空装置の漏れ試験や自動リーク試験機において高感度で検出するためには,HLDのテストポート排気速度を大きくする必要がある.しかし,複合分子ポンプの排気速度を大きくすると,分析管に到達するヘリウムの量が少なくなり,感度が下がってしまうという問題がある.

「HELIOT 900シリーズ」では,複合分子ポンプの気体導入ポートでの排気速度とテストバルブのコンダクタンスを大きくすることによって5L/sec(Ultraフロー)という排気速度を実現し,後述の微小電流検出能力の向上によって,高感度での検出を可能にした.約30L容積の試験体を1×10-11Pa・m3/sec台のバックグランドレベルまで表示するのに必要な圧力までの時間は,Figure 3に示すように従来機種に比べて5分以上短縮されているのが分かる.

また,真空装置の漏れ試験を行う場合のように,チャンバに疑似的に漏れを発生させて,真空ポンプで排気しながら,HLDを接続して試験すると,従来機種と比較して漏れ量が,約1/5まで検出可能になった.
「HELIOT 900シリーズ」の排気系統図をFigure 4に示す.従来から採用しているセレクトフリー排気系を搭載しているが,従来からの標準・高感度モードの切り替えはなく,Grossフロー(接続圧力:1200Pa),Fineフロー(接続圧力:100Pa),Ultraフロー(接続圧力:2Pa)の3つのフローで大きな漏れから微小リークまでの測定を実現している.起動時間も起動時のフローを見直すことにより,校正動作を含めて5分以下,校正を行わない場合は2分以下となった.

ベントラインは,従来の位置から校正リークバルブと校正リークの間に変更することで,連続運転時のバックグランドの上昇を抑制している.また,今回新しく追加したD4タイプは,粗引きバルブを搭載しており,試験体内の排気時間をさらに短縮可能になっている.

使用しているコンポーネントについても従来から使用しているものから見直しを行った.圧力監視用のピラニ真空計は新しく開発された「SPU」5)を採用しており,デジタル通信でメイン基板に圧力信号が送られる.W1タイプのフォアポンプには,マグネットカップリング構造により,軸シールからの

Figure 4 Vacuum system diagrams.
Figure 4 Vacuum system diagrams.

油漏れが無く,長寿命化を実現しているアルバック機工製の「GHD-031」を採用した.
また,オイルミストトラップを標準付属とした.分析管には,分析管内が汚れた場合や高い圧力の場合に発生する2次電子がイオンコレクタにあたるのを抑制する電極を設置し,信頼性のある測定を可能にした.
また,従来機種と同様にトレーサーガスとして水素を使用できる「水素測定モード」も用意している.

 

 

リークディテクタHELIOT900の3つの特長