OLED用薄膜封止装置
「CEE-950」の開発

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1.はじめに

近年,OLED(Organic Light Emitting Diode:有機発光ダイオード)デバイスは携帯電話用ディスプレイを筆頭に,大型テレビ用ディスプレイ,特殊・装飾照明など,一般消費者向け市場でも定着し始めている.OLEDの特長を生かした次世代デバイスとして,フレキシブルディスプレイ,フレキシブル照明が期待され,各社がしのぎを削りながらデバイス開発,材料開発,及び,装置開発を進めている.

(※この記事は、2015年6月発行のテクニカルジャーナルMo.79に掲載されたもので、内容は取材時のものです。)

約30年前より開発が始められたOLEDデバイス 1)において,最も重要な開発項目の一つとしてデバイス長寿命化が挙げられる.その寿命を決めている主要因は,水分と酸素である 2).これらが存在すると,OLEDデバイスが非常に敏感に反応し,素子が劣化するためである.
例えば,水蒸気透湿度(WVTR:Water Vapor Transmis-sion Ratio, g/m2/day)で比較した場合,他の電子デバイス(半導体(TFT),LCD等)よりも2~5桁低い透湿度(バリア性が高い)の封止性能が要求される(Figure 1)2).OLEDデバイスを封止する材料として,これまでガラスや金属シート等が採用されてきた 3)

Figure 1 Water vapor transmission rate (WVTR) required for encapsulation film for electronic devices.
Figure 1 Water vapor transmission rate (WVTR) required for encapsulation film for electronic devices.
Figure 2 Distribution of acrylic film thickness of G4.5 equipment.
Figure 2 Distribution of acrylic film thickness of G4.5 equipment.

フレキシブルデバイスでも極薄ガラスの採用が試みられているが,“割れる”材料であることから,フレキシブルデバイス向けの最終的な封止材料としては相応しくないと捉えられている3).金属シートは,ボトムエミッション型のフレキシブルデバイスにも採用されている例もある 3)

しかし,近年,OLEDデバイスの発光効率を上げるための手段であるトップエミッション構造では採用できないため,フレキシブルデバイスでも採用される機会が減ってきている.

上記のような状況下において,薄膜封止技術がフレキシブルデバイス向けの封止技術として期待が高まってきている.当社は,封止技術の開発を1999年より,薄膜封止技術の開発を2010年より始めており,国内・海外の顧客ともデバイス評価を重ねながら,プロセス技術を磨くと共に装置改良を続けてきた4).その結果として,2014年に薄膜封止用装置CEE-950を完成させ,顧客に納め,デバイス開発及び生産に使用して頂いている.

2.薄膜封止技術

OLEDデバイス用の薄膜封止技術は,大気中の水分や酸素からOLED素子を保護する目的のバリア膜と,そのバリア膜がOLED素子表面に付き回り(Coverage)よく成膜できるためのバッファー膜との積層構造を取ることが,現在,主流となっている 5)

バリア膜の候補として,PECVD法・SiNx膜6),7),PVD法・AlOx膜5),ALD法・AlOx膜8)-10)があり,各社で開発,評価が進められている.PVD法・AlOx膜は比較的薄い膜(~50nm)でバリア性が確保できる8)ことから薄膜封止技術の開発当初は多く採用されていた.

しかし,PVD法で使われるプラズマからのダメージがOLEDデバイスの特性に影響を与えることが認識され始め9),徐々にPVD法・AlOx膜は採用されなくなっている.ALD法・AlOx膜は,コンフォーマルでカバレッジ性の高い成膜が出来ることから有力なバリア膜の候補と考えられているが10),成膜速度が非常に遅いことと,水分との直接接触による膜の腐食が起こりえること11),等の理由より,ALD法・AlOx膜の単独ではバリア膜として採用は難しいと考えられ,PECVD法・SiNx膜,等との積層でバリア膜として検討もされている.
当社は,1999年よりOLEDデバイス用バリア膜の開発を始め,2001年には低温SiNx成膜用PECVD装置を完成させている.当時は,主にDam&Fill法の様なガラス封止技術における仮封止(Passivation)膜として,低温SiNx膜を採用している.OLEDデバイス用バリア膜の成膜技術として,OLED素子が劣化しない温度で処理することが重要な技術の一つである.当社の低温(90℃以下)用PECVD装置で成膜される低温SiNx膜は,他社の低温SiNx膜に比べてバリア性が優れている上に,光透過率が高い,膜応力が低い,等のOLED用バリア膜としての要求項目を満たしていることから多くの顧客に採用されている.当社の薄膜封止技術は,このOLED用バリア膜として実績豊富なPECVD法・SiNx膜を採用している.

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