リークディテクタ
「HELIOT 900シリーズ」の開発

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(※この記事は、2015年6月発行のテクニカルジャーナルMo.79に掲載されたもので、内容は取材時のものです。)

3.6 メンテナンス

Figure 7 Photograph of the inside of a portable type.
Figure 7 Photograph of the inside of a portable type.

HLDは複合分子ポンプ,フォアポンプを使用しており,そのポンプを含め定期的なメンテナンスと消耗品の交換,校正リークの再校正を行う必要がある.その際に外装パネルを外す必要があるが,「HELIOT 900シリーズ」では,工具を必要とせずに,簡単に外せる構造とした.イオンソースは従来通りユニット交換式になっており,ピラニ真空計測定子,校正リークについても作業がし易いように配置した.

W1タイプのロータリーポンプのオイル交換は,オイルドレーン口をホース形状にすることで,簡単にオイル交換ができるようになっている(Figure 7).
また,メンテナンスと消耗品の交換作業手順をタブレット内に動画を用意しているので,初めて作業する場合でも安心して作業が行えるようになっている.メンテナンス案内画面はユーザーで任意な時間の設定可能になっている.

 

4.おわりに

お客様から今まで頂いた貴重なご要望・ご意見を反映した「HELIOT 900シリーズ」の開発を報告した.しかし,ヘリウムを利用した漏れ試験をとりまく環境はここ数年で大きく変わってきている7)
国内規格に関しては,日本工業標準規格JIS Z 2330:1992は「ヘリウム漏れ試験方法の種類及びその選択」であり試験がヘリウムガスを利用した漏れ試験に限定していた.しかし,新規格のJIS Z 2330:2012は「非破壊試験―漏れ試験方法の種類及びその選択」となり,規格の対象が漏れ試験全体に広げられている.
技量認証に関しては,一般社団法人 日本非破壊検査協会が,技術者の技量認証試験を実施し,技術者の技量認証を2012年に開始している.背景には,漏れ試験の試験結果の精度は,非破壊試験技術者の技量に大きく左右されることがあり,試験者の技術レベルを一定にしておく必要があるためである.
漏れ試験に使用するヘリウムガスに関しては,大気中にわずかしか含まれておらず,また限られた地域でしか算出されていない貴重な資源である.そのため,今後少ない使用量で大切に利用することが必要になってくる.
このような環境の中で,今後も継続的に基本性能・使い易さの改善・改良,校正技術の向上,最適な試験方法の提示,ヘリウムガス使用量の削減提案を行い,より早く,より微小な漏れをより正確に測定出来るようにしていく予定である.

(※この記事は、2015年6月発行のテクニカルジャーナルMo.79に掲載されたもので、内容は取材時のものです。)

リークディテクタHELIOT900の3つの特長
文 献
1) 落合英二郎,梅澤明雄:特公平8-15708
2) 落合英二郎:ULVAC TECHNICAL JOURNAL 50(1999)19.
3) 前平隆行:ULVAC TECHNICAL JOURNAL 74(2011)25.
4) 株式会社アルバック:J. Vac. Soc. Jpn. 54(2011)64.
5) 中島豊昭,宮下剛,永田寧,福原万沙洋,内田康文,大橋靖知,西巻武輝:ULVAC TECHNICAL JOUR-
NAL 76(2012)8.
6) 中島豊昭,田中領太,由利努,黒川裕次郎,青柳秀勝,高橋直樹:ULVAC TECHNICAL JOURNAL 71
(2009)14.
7) 田村芳一:J. Vac. Soc. Jpn. 54(2011)56.