OLED用薄膜封止装置
「CEE-950」の開発

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(※この記事は、2015年6月発行のテクニカルジャーナルMo.79に掲載されたもので、内容は取材時のものです。)
Figure 3は,当社PECVD装置で成膜したSiNx膜の膜厚とWVTRの相関グラフである.WVTRはCa(カルシウム)法13)で測定している.グラフ上で示すように,SiNx=400nmの膜厚で5×10-5g/m2/dayと低いWVTR(すなわち高いバリア性)が得られていることが分かる.他社のPECVD装置で成膜したSiNx膜で同等のバリア性を得るためには,1μm以上の膜厚が必要とされている.この高いバリア性は,豊富な経験を元に設計されたハード構成とプロセスの最適化により得られている.
FT-IRの分析結果から,SiNx膜中の水素の残留濃度が低いことが分かっている.残留水素は水分や酸素と相互作用を起こし,バリア性を悪化させることが報告されている 15).大気中の水分や酸素との相互作用が少ないSiNx膜が生成できているためと考察している.

Figure 3 Correlation between SiNx film thickness and water vapor transmission ratio.
Figure 3 Correlation between SiNx film thickness and water vapor transmission ratio.

 

Figure 4 Cross-sectional SEM image showing localization of acrylic film at a stepped portion.
Figure 4 Cross-sectional SEM image showing localization of acrylic film at a stepped portion.

Acrylが段差部に局在化する特長はAcrylモノマー材料に依存している.当社のモノマー材料は,表面張力でデバイス角部や狭ギャップ部にアクリルを保持することができる.一方で,他社のAcrylモノマー材料は,局在化せず全面に成膜されている.Figure 4は,当社のAcryl膜が段差部に局在化している様子を示した写真である.

この写真が示すように,一層目のSiNx膜を成膜した後に付着したAcryl膜は,トレンチの段差部に局在化し,その上層のSiNx膜がカバレッジよく成膜することを補助していることが分かる.
SiNx膜は高いバリア特性を有するが,デバイス角部や狭ギャップ部へのカバレージ性能に劣るため,これらの部分より水分や酸素が入りデバイスのWVTRは低くなる.しかし,Acrylを局在化させることにより,上層SiNx膜のカバレッジが良くなるため(Figure 4),結果,当社の薄膜封止技術は優れた封止性能を達成できている.

Figure 5 Results of lifespan test in a high temperature and high humidity environment.
Figure 5 Results of lifespan test in a high temperature and high humidity environment.

Figure 5は,当社で薄膜封止したOLEDデバイスを60℃,相対湿度90%(以下90%RH)の高温高湿環境下で500時間保管し,発光状態を観察した結果である.大気中の水分や酸素が封止膜を透過しOLEDデバイスに到達した箇所は黒点(或いは,ダークスポット)が現れるが,図中のデバイスでは黒点が現れていない.

黒点が現れる現象は,水分や酸素と反応しやすいOLEDデバイス上層のカソード材料(Al,Mg/Ag,Li系等)が,水分や酸素と接することにより反応し電気的に絶縁体となるためである.封止性能が不十分な(水分,酸素が侵入した)箇所から黒点が現れ,時間経過とともに水分,酸素の侵入量が増えるに従い,その黒点の面積は広がっていく.Figure 5のデバイスは,高温高湿環境下に保管開始後から新たな黒点が現れておらず,且つ,黒点の面積も大きくなっていないことから,当社の薄膜封止技術は十分な封止性能を持っていると評価できる.

なお,60℃,90%RHの高温高湿環境下でのテストは,25℃,50%RH環境下に対して10~100倍の加速テストに相当すると言われている3)

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