生産技術による安定供給で 世界トップシェア獲得

This post is also available in: 英語

今後モジュールのさらなる集約化、一体化が進むかも……

村田製作所微細化技術1
図表3-1 埋め込みコンデンサーの微細化推移1

小日向:先ほどロビーで0.1 ミリとか0.2 ミリといったチップを拝見しました。これを並べてくしゃみをしたら吹き飛んじゃうねと、感心していました。それくらい小さくなっていますね。
齋藤:どこまで小さくなりますか。
酒井:いつかさじを投げるでしょうが、人間の知恵は無限であるという性善説を信ずるしかないですね。いくらなんでもどこかでストップがかかるでしょうが。

村田製作所微細化技術2
図表3-2 埋め込みコンデンサーの微細化推移2

齋藤:半導体では、過去大きな基板でつくりあげたものを小さく刻んでいましたが、今ではさらに微細化が進み、デバイスを基板に直接つくり込む高密度実装が進むと思われます。微細化ということで、ムラタさんの製品の場合、今後どうなりますか。
酒井:いままでチップは長方形だったわけですが、これからは曲げるとか、異型モノがキーワードかも知れません。モジュールでいえば、斜めのところに置きたい、スペースが空いているから入れたいというように、形状もさまざまな要求が出てくる可能性があります。モジュールの考え方では、どこまで大規模モジュールにするかというのが思案のしどころになることでしょう。ある範囲の機能を全部一つにしてしまうというわけです。
小日向:そうするとベンダーは一社で良いということになりかねない。ますますムラタさんが有利になる。
酒井:しかし全部ということはないでしょう。いまスマホは大きく4つの部分で成り立っています。頭脳であるCPU の部分、表示の役割をもつ液晶ディスプレイの部分、コミュニケーションの通信の部分、そしてバッテリーです。それが一体になるかというとアナログとデジタルの混在ということで、これを完全に一体化することはないでしょうが、この4分野に集約される可能性はあるでしょう。そうなるとモジュール点数は極端に少なくなる一方でさらなる微細化技術が必要となることでしょう。
齋藤:微細化はうちの得意分野です。これからさらに多くの場面でアルバックにもお手伝いさせてください。(笑)

お客様のニーズに迅速に応えるスピード対応を

酒井:やはり「スピード」というこの一言に尽きると思います。スピードこそ金になるものは他にありません。ムラタが伸びたのもスピードという、普通では推し量れないものが、お客様の要求に応えていく段階でそれが実証できたのです。スピードは会社を良くしてくれる、早いことは良いことです。
小日向:全くその通りだと思います。お客様への対応、社内手続きなどもっと早くする必要があります。
酒井:当社の例ですが、早いものは稟議書が2 ~ 3 日で決済が降りてきます。これも良い意味で権限移譲がなされているからできるのでしょう。
そんなに急ぐならどうぞ進めてください、という感じです。
小日向:アルバックのことですが、ある書類の各担当者の承認印の多いことに驚き、半分以下に減らさせました。そういった面を見ても当社はまだまだ改善することがあります。
酒井:しかし不景気になるとさすがにチェックは厳しくなりますよ。いくらなんでも野放しというわけではありません。そのへんは絶妙なバランスで役員がコントロールしているのでしょう。
小日向:今日の酒井さんのお話を参考にして、アルバックも一刻も早くさらなる権限移譲でスピードアップを実現していきたいと思います。ムラタさんを参考にしていきたいと思っています。今日は大変貴重なお話を伺うことができました。
小日向齋藤:どうもありがとうございました。

 

巻頭対談-酒井フェロー株式会社 村田製作所 通信・センサ事業本部 フェロー
酒井 範夫(さかい のりお)氏プロフィール
1958年3月1日生まれ。京都大学工学部 機械系物理工学科 修士卒業。
1982年 株式会社 福井村田製作所 生産技術部入社
積層セラミックコンデンサー、セラミック多層基板の製法、設備開発に従事
1993年 株式会社 村田製作所 野洲事業所
2005年 同社通信事業本部 パッケージ技術部 部長
2008年 同社新規商品事業部 製造・材料技術1部 部長兼務
2012年 同社 フェロー
2014年 通信事業本部 機能基板商品部 部長兼務
通信事業本部 技術統括部 統括部長
現在に至る

会社概要(2015 年3 月31 日現在) *ホームページより
株式会社 村田製作所巻頭対談_ムラタ本社外観
商     号:株式会社 村田製作所
本店所在地:京都府長岡京市東神足1 丁目10 番1 号
設     立:1950 年12 月23 日
資  本  金:693 億7,700 万円
代表取締役社長:村田 恒夫
拠     点:アメリカ:9、ヨーロッパ:9、中国および東アジア:27、日本:36(本社を除く)、東南アジアおよび南アジア:12
従 業 員 数:5 万1,794 名(連結)
事 業 内 容:ファンクショナルセラミックスをベースとした電子デバイスの研究開発・生産・販売
生 産 品 目:積層セラミックコンデンサ、表面波フィルタ、セラミック発振子、圧電センサ、セラミックフィルタ、圧電ブザー、近距離無線通信モジュール(Bluetooth モジュールを含む)、多層デバイス、コネクタ、アイソレータ、電源、回路モジュール、EMI 除去フィルタ、インダクタ(コイル)、センサ、抵抗器他

(※この記事は、2015年7月発行の 広報誌No.65に掲載されたもので、内容は取材時のものです。)