さらなる成長フェーズへ

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「活性化」 から「 一体化」 に向けた生産面での取り組み

アルバックグループは2012年度から、“活性化”をキーワードに「事業構造改革プロジェクト」を推進してきました。これにより、開発・営業・生産セクションのグローバルな連携が強化され、製品競争力や収益力などが高まってきました。そして、さらなる成長を確実なものとするために、次のステップとして“一体化”をキーワードにした経営へと舵を切りました。こうした中、アルバックグループの価値創造の源泉である開発力と人材力をベースとした総合力をいかに強化していこうとしているのかについて、生産部門の責任者が集まり座談会を行いました。

司会進行
(株)アルバック 経営企画室 広報・IR室長
鈴木 憲明

小田木 秀幸
(株)アルバック
取締役常務執行役員 生産本部長

森本潤
(株)アルバック
生産本部 生産技術センター 品質保証部 部長
兼 教育センター 部長

廣瀬知子
(株)アルバック
生産本部 教育センター 専門室長

司会:事業構造改革プロジェクトによって、生産本部の担う役割が大きく変わったようですね。

小田木さん
小田木 秀幸 (株)アルバック 取締役常務執行役員 生産本部長

小田木:従来の生産本部の役割は、社内IT化による業務(決算、メールシステム他)効率アップ、品質・環境マネジメントシステムの運営事務局及び品質検査、購入品の調達、環境・安全の確保支援など、事業部のサポートがメインでした。しかし、現在では従来の役割に加え、3年前に発足した事業構造改革プロジェクトのもと、フロントローディングを確実に推進し、安定した利益を創出するための仕組みづくりの機能を担っています。
具体的には、各事業部や共業各社のものづくりの現場に積極的に関わり、必要に応じて改善指示や指導を行い、グループ全体のものづくりを指揮することがメインのミッションとなりました。言うなれば、事業部を支える側から引っ張る側へと役割が変わったわけですから、最初は戸惑いもありましたが、グループのさらなる成長に向けて部員一同使命感を持って取り組んでいます。

司会:生産を統括される立場になられて1年が経過しました。現在のフロントローディングの状況、ものづくりの体制について、どのように評価されていますか。

小田木:この3年間、“活性化”をキーワードにフロントローディングをとにかく徹底してきたことで、計画通りの利益を創出するためのものづくりの体制が着実に整ってきたと思います。取り組み過程ではさまざまな課題もありましたが、過去の慣例にとらわれることなくゼロベースで仕事の仕方を見直し、グループ一丸で改善を図ってきた成果だと思います。実際にフロントローディングの導入前後でトラブルの発生件数や製造予算オーバーの件数が着実に減少しています。そして、改善効果が目に見えて表れてくるにつれて、取り組みへのモチベーションや本気度が増し、部門間の意見交換も活発になりました。さらには各事業部の取り組みにも相乗効果が見られ、グループ全体としてのものづくりの体制・姿勢が加速度的によい方向へと活性化されていると思います。

森本:事業環境の変化が激しい現在、一組織・一部門だけで何かを改善しようとしてもやはり限界があると思います。しかし、このようにグループ一丸で共有しながら取り組みを進めることで、改善のスピードがアップし、新たな発想もたくさん生まれ、効果や効率も数段アップします。私たち生産本部の使命は、こうした取り組みを的確にモニタリングしながら、常に活性化させていくことです。現状、フロントローディングの取り組み成果は徐々に上がってきておりますが、各事業部での定着及び効果的運用とグループへの展開に向けた活性化をさらに推進していきたいと思います。

司会:“活性化”という点では、2014年度から3つのグループ活性化プログラムを展開されていますが、取り組みの背景や活動内容についてお聞かせください。

小田木:フロントローディングの推進により、ものづくりの体制が整い活性化されてきた一方で、まだまだ改善の余地があると考えています。やはり当社グループの価値創造の源泉は人材力であり、社員の能力やスキルを十分に引き出し、グループの多様性を最大限に活かすことができなければ、アルバックがめざす“あるべき姿”に近づくことができません。つまり、ものづくりの体制とそれを支える人材の育成を両輪で強化する必要があるのです。そこで、2014年度は従来実施していた“生産技術報告会”をグローバル化し、また、新たに“グローバル業務改善報告会”、“Skill Challenge”の3つのグループ活性化プログラムを展開し始めました。

森本さん
森本潤 (株)アルバック 生産本部 生産技術センター 品質保証部 部長 兼 教育センター 部長

森本:当社グループの強みと価値は総合力であり、グローバルに多様な人材がいることだと思います。そうした強み・価値をいま一度再認識しながら、しっかりと社員の能力を引き出し活性化させていくためにこれらのプログラムを企画しました。今回のポイントは、技術分野に限らず、事務職を含めたあらゆる組織・部門を対象としたことです。さまざまな部門で働く社員が、日々の実務成果や教育スキルなどを報告、競い合いながら共有することで、実務をグローバルに改善し、さらには経営に活かしていくとともに、社員の提案や創意工夫、努力の成果を広く公平に判断し評価する仕組みをめざしています。

司会:社員の皆さんの反響がかなりあるようですね。

廣瀬:これまでは各国それぞれで実施していたものを、グループ一体で展開したことで、競争意識が刺激され、さらにコミュニケーションの機会も増えたことで、社員の皆さんがとても生き生きと取り組まれています。実は先日、中国での報告会があり参加してきました。そこでは、やはりグループ全体で成果を見せる機会が生まれ、非常にモチベーションが上がっているのを感じました。また、日本でもっと技術を勉強したいという社員も増えているという話を聞きました。このように今回のプログラムによって、社員の皆さんが活気づいたことは一つの成果といってよいと思います。

司会:技術力の強化に関連して、2015年度から生産本部内に新たに教育センターを新設し技術教育に力を入れていくようですね。

小田木:真空技術というのは、成長市場にこそ必要とされる技術だと考えています。私たちはこれまでも「真空技術で産業と科学に貢献する」という企業理念のもと、時代が求める新しい価値の創造に果敢に挑戦してきました。近年、地球環境問題をはじめとした社会課題が顕在化する中、当社グループの製品や技術
は、特にエネルギーとIoT分野で貢献していくことができると考えています。しかし、そうした分野ではこれまでよりも難しい技術開発が求められますし、かつ安定した利益を創出しながら開発することが必須になりますので、スピードや効率なども求められます。そこで、何よりも必要になるのは技術力であり、スキルアップや技術の向上が重要になるわけです。そこで、教育センターを新設し技術教育に一層力を注いでいこうと考えています。

廣瀬さん
廣瀬知子 (株)アルバック 生産本部 教育センター 専門室長

廣瀬:これまで社員の教育は人事部が行っていましたが、より専門的な技術に関する教育は生産本部内で実施することとしました。現在は、生産本部が部門長会と共同で、各部門であるべき姿を描き、そこから必要なコア技術やスキルを導き出し、教育資料を作成しています。今後はその教育資料をもとにプログラムを作成し、計画的に技術者教育を行っていきます。

森本:今後はこの教育プログラムをきっかけに、社員のさらなる成長やキャリアアップにもつながっていくことを期待しています。例えば、製造で経験を積んだ社員が次のステップとして、製造の指導者なり幹部を目指す。または、製造で培った経験を活かして、設計や技術の仕事を目指す。ずっと同じ業種を黙々とやるのではなく、人材が流動して組織も個人も活性化していく。そして、技術力の向上と結果としてグループ全体の成長にもつながる。そういったかたちが理想だと考えています。

司会:最後に今後の取り組みについてお伺いします。小日向社長は、2015年度から“一体化”をキーワードにした経営を推進すると明言しています。今後、生産本部における“一体化”に向けた取り組みに関して、展望などをお聞かせください。

小田木:これまでに進めてきた“活性化”をキーワードとしたフロントローディングの徹底によるものづくり体制の強化とそれを支える人材の育成に関しては、継続して着実に実行していきます。今後はそこに“一体化”というキーワードが加わるわけですから、部門別・会社別の枠を超えて、事業全体として究極の効率アップをめざしていきます。つまり、開発・営業・生産の一体化やグループ・組織の一体化も含め、とにかくムリ・ムラ・ムダを徹底的に取り除き、全社員のエネルギーが向
かう方向を、安定した企業体質を築くという目標に向けて集中できるようにすることだと思います。まず当面は、国内の生産体制にフォーカスして“一体化”に向けた改革を進めていきます。課題は少なくありませんが、時代が求める新しい価値を創造し、幅広い産業、そして社会から必要とされる企業グループとなるために、グループ社員で力を合わせ、頑張っていきたいと思います。