低消費電力、サステナブル

爆発的に増加する電子データを処理するため、計算能力に対する需要は衰えることがありません。そのため、データセンターなど、計算機の消費する電力は全世界の消費電力の2%を超えるまでに大きくなっています。計算中はLSIの微細な配線中において高い周波数の電気信号がやり取りされるために、実際はその電力の50%以上は熱として失われています。そのため電荷をもたないキャリアを使った信号の伝送技術が期待されています。量子力学に基づいた基礎的な実験から光を使った信号伝送の検証を行います。

「GeSnオプトデバイス」
現在の半導体はシリコン(Si)を材料として作られています。LSI間の光通信もSiと同じプロセスで作製可能なデバイスを使いたいので、シリコンフォトニクスと呼ぶSiの導波路に光を伝達する技術が開発されています。一方で、Siは間接遷移型半導体なので発光しません。周期表で同じIV族のゲルマニウム(Ge)はSiに比べ電子の移動速度が速く、より高速なLSIを実現する材料として期待されています。このGeをスズ(Sn)との合金とすると直接遷移型半導体になることが理論的に予想されています。つまりGeSnの単結晶を使えば、シリコンフォトニクスに利用できる発光半導体を作製することができます。そして、きわめて良質なGeSn結晶膜が作製できれば、さらにレーザー発光部、受光部が実現されます。

アルバックは、これらの技術を使った光に基づく次世代集積回路の要素開発を行っています。

スキルミオンのイメージ図

現在のコンピュータはトランジスタを集積し、トランジスタの個数を増すことで性能を高めてきました。プロセスピッチ10nm、7nm、3nmと縮小し、いよいよ物理的な限界を迎えつつあります。新しい原理に基づき、より高速な計算を実現するために量子コンピュータが研究されています。一方で、生物の神経の情報伝達を模倣するニューロチップなどが研究されています。生物の神経における情報伝達では熱揺らぎが重要な役割を担っており、例えば人間の脳はたかだか20Wの消費エネルギーで動いています。生物の情報処理原理を、コンピューティングに応用する試みのひとつがブラウニアンコンピューティングです。ブラウン運動という周囲の熱エネルギーによるランダムな動きを簡単な機構で一方向の流れに変えて、論理回路を作るという、夢のような話なのです。

アルバックでは、スキルミオンという、固体の中のミクロな磁気渦を使ったブラウニアンコンピューティングの開発に取り組んでいます。

単結晶膜が作製できるスパッタ成膜装置:QAM4