「蒸着重合」を活用した魚釣りのルアー

真空ひばりの真空教室 Vol.23

はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。

この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。私の名前「真空ひばり」は、ボイルの法則で知られる科学者、ロバート・ボイルが、真空中では音が伝わらないことを知るために「ひばり」を使って実験したという逸話をもとにつけられた名前です。よろしくネ♪

魚釣りで使う道具「ルアー」も真空内の蒸着重合を応用してつくられている

真空ひばり(まそらひばり)真空教室の講師を務める27歳。

「えっ、こんなものも真空と関わりがあるの?」と思ってしまうくらい、意外なものに真空技術が使われている、というのが今回のお話です。いろんなアウトドアスポーツの中で、魚釣りを楽しむ人もたくさんいますが、気軽にできて人気が高いのがルアー釣りです。ルアーは疑似餌のことで、魚に似せた形の金属にめっきや塗装を施したものが使われています。

ルアーにライン(釣り糸)を結んで投げて、リールでラインを巻き取ると、ルアーは水圧を受けてさまざまな動きをします。ただの金属片やプラスチック製のルアーが、まるで小魚のように泳いだりきらめいたりするため、これを見た魚が餌だと思ったり、敵だと錯覚したりして反射的に食いついてしまうんですって。古くから親しまれてきたこのルアーで、成膜法を応用した製品があります。表面に「蒸着重合」という方法で皮膜をつけるもので、角度によって色合いが変化するホログラムカラーが魚の気を引くようです。

基板上でモノマーを重合させる蒸着重合

蒸着重合とは、真空中で2種類のモノマーを同時に加熱して蒸発させ、基板上で重合反応をさせてから、高分子ポリマー膜として成膜する方法です。ルアーでは、無水ピロメリト酸オキシジアニリンの2つの原料モノマーを使いますが、従来の方法ではこれらをまず、重合反応させてポリマーにしてから基板に塗布していました。これに対して蒸着重合法は、真空内で別々に蒸発させた基板表面で重合反応を起こさせるため、薄膜の生成が可能となりました。その結果、ポリイミドやポリアミド、ポリ尿素などの樹脂を数nmから100μmまでの範囲で成膜できます。

蒸着重合法は、1984年に新しい機能性高分子成膜法として開発されました。成膜された高分子膜は、絶縁膜・断熱膜・保護膜などの機能性膜として利用され、すでにセンサやモーターコア、医療機器への応用が実用化されています。

ルアーへは、成膜面のもつグラディエーション性とホログラフィー性から応用されたもので、真空技術は最先端のデバイス製造だけでなく、こうした日用スポーツ品へも広がりを見せているんですね。

用語解説
モノマー/ポリマー

同じ種類の小さな分子が互いに多数結合して巨大な高分子となるとき、小さい分子をモノマー(単量体)、生成した高分子をポリマー(重合体)という。

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