物質の表面分析は真空中でこそ可能となる

真空ひばりの真空教室 Vol.24

はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。

この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。私の名前「真空ひばり」は、ボイルの法則で知られる科学者、ロバート・ボイルが、真空中では音が伝わらないことを知るために「ひばり」を使って実験したという逸話をもとにつけられた名前です。よろしくネ♪

物質の表面分析は真空中でこそ可能となる

これまで、いろいろな製品やデバイスがどのように真空を利用してつくられているのかをお話してきましたが、この教室の最後に、真空を応用して物質の固体表面を分析する方法について、お話したいと思います。低速荷電粒子(電子イオン)を分析に用いると、固体の表面だけの情報を得ることができます。たとえば、固体試料を真空中に置いてイオンをぶつけると、最表面の原子・分子が真空中に飛び出します。そう、スパッタリング現象です。

こうして表面から出てきた原子や分子の一部はイオン化していて、このイオンの質量と数を計測することによって、固体表面の原子・分子構成を知ることができるんです。この手法は、SIMS(二次イオン質量分析法)と呼ばれ、半導体産業を始めとする多くの産業分野で用いられています。

表面に刺激を与えて飛び出した電子のエネルギーを計測

真空ひばり(まそらひばり)真空教室の講師を務める27歳。長い間ご愛読ありがとうございました。

表面分析は、表面の原子・分子に与える刺激(プローブ)と、計測する荷電粒子の組み合わせによって、何十種類もの手法があります。表面分析法としてはSIMSのほかに、X線を照射して出てきた電子の運動エネルギーを計測する手法(X線電子分光法 : XPSまたはESCA)や電子を照射して出てきた電子の運動エネルギーを計測する手法(オージェ電子分光法: AES)などが一般的によく使われています。

AESは、試料に電子を当てることで出てくる電子を分析するものです。原子核のまわりの電子に電子を当てて空席にすると、外側の軌道を回る電子がそこに落ちて、そのときにX線を出さずに、そのエネルギーによって電子が飛び出すことがあるため、その飛び出した電子を分析することで元素の種類が特定できるんです。そして電子の代わりにX線を当てて、出てきた電子の運動エネルギーを計測するのがXPSです。

表面分析法は、とても多くの産業・科学研究分野において、新しい特性や機能を備えた物質の研究開発・品質管理に欠くことのできない手法として、長い間ずっと進歩を続けてきましたし、これからも必要不可欠なものなんです。

 

以上で私の「真空教室」はひとまず終わりです。
長い間、私の拙い講義にお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

用語解説
原子
物質の基本的な構成要素で、原子核と電子とから構成されています。自然に存在する物質は92種類の原子からなりますが、人工的につくられる寿命の短い原子十数種類の存在が確認されている。

 

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