プラズマと真空中の薄膜生成

真空ひばりの真空教室 Vol. 10

はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。
この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪

Vol.9のお話の中で、真空をつくる際に「プラズマ放電から発生したイオンで表面をたたく方法」があるという説明をしましたが、今回はその「プラズマ」についてのお話です。

真空を利用して薄膜を生成するときなどには、多くの場合プラズマを発生させます。
そのプラズマとは、真空中で放電などによってエネルギーを与えるときに、気体が電離する状態のことです。

プラズマ状態では、原子や分子を構成する電子が、原子核の束縛から離れて正イオンと電子に電離します。

このような気体を電離気体といい、とてもエネルギー状態が高くなっています。
プラズマを生成するためには、エネルギーの供給の仕方によって「放電電離」と「熱電離」、「光電離」の3つの方法があります。このうち真空技術で用いられるのは放電電離で、加える電流の種類によって直流放電、高周波放電、マイクロ放電、パルス放電などがあるんですよ。

プラズマのエネルギーで物質をたたく

真空ひばり(まそらひばり)真空教室の講師を努める27歳。LINEスタンプデビューを果たす。

ドイツの物理学者ガイスラーが発明したことでその名が付いた、ガイスラー管というガラス製の放電管の両端に、直流高電圧を加えると、圧力103Pa以下で放電電流、数十mA以下の安定した「グロー放電」という現象が見られます。グロー放電が起こるのは、低圧力の気体の中に高電圧を加えて強い電界をつくると、「絶縁破壊」という現象が生じて火花放電が起こるからなんです。

このプラズマを利用すると、材料の表面に薄い膜を生成することができます。たとえば、ターゲットにマイナスの高電圧をかけると、プラズマのプラスイオンがターゲットに衝突して、そこからターゲット材料を構成する物質が飛び出て、基板に薄い膜として付着させることができるんです。

それからもう一つ、プラズマの中で材料を蒸発させると、蒸気がプラズマの中を通過するときに、一部は電子と衝突してイオン化されます。これを高電圧をかけた基板に引っ張りこむことで、付着性に優れた膜を形成することができます。

プラズマは活性であるため、電子、イオン、励起された原子や分子(ラジカル)などがつくられ、皮膜の生成や加工、金属の溶解など、多くの真空技術分野で利用されています。

 

用語解説

イオン

中性の原子が、1個または数個の電子を失うか(プラスイオン)、あるいは1個または数個の電子を得て(マイナスイオン)生じる粒子をいう。

励起

原子や分子が外からエネルギーを与えられ、もとのエネルギーの低い安定した状態からエネルギーの高い状態へと移ること。

 

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