アルバック成膜株式会社,株式会社ファインサーフェス技術

地域に根差した企業世界の半導体・FPD製造を支える
――徹底した品質管理による安定供給と最高品質へのこだわり

世界でも数少ないマスクブランクス※1メーカーであるアルバック成膜株式会社(以下、ULCOAT)は、日本三大曳山祭「秩父夜祭」※2で知られる埼玉県秩父市に本社・工場を構えている。

ULCOAT代表取締役社長.五野上.好則氏(左)
FST代表取締役社長.名和.浩之氏(右)

子会社の株式会社ファインサーフェス技術(以下、FST)も隣接しており、2社の密接な連携により、最先端かつ高品質のマスクブランクスを製造している。2001年には台湾にも生産拠点を設立し、積極的に海外展開もはかっている。今回の「拠点巡り」では、ULCOAT代表取締役社長の五野上(ごのかみ) 好則氏、FST代表取締役社長の名和 浩之氏に、現状と今後のビジョンについて話を聞いた。
※1 マスクブランクス……高精度で研磨されたガラス基板に遮光膜(クロム等)と感光剤(レジスト)をコーティングしたもの。これにEB(電子ビーム)描画装置などで回路パターンを描き、露光された部分を除去・エッチング加工をするとフォトマスクになる。
※2 秩父夜祭……秩父神社の例大祭の中心行事。300年余りの歴史を持ち、京都祇園祭、飛騨高山祭と共に日本三大曳山祭の1つに数えられている。2016年12月1日にユネスコ無形文化遺産に登録された。

はじめに

大型マスクブランクス

ULCOATは、1979年に日本真空技術株式会社(現.株式会社アルバック(以下、アルバック))のSI部約50名が移籍・分離独立してできた会社で、同部のハードマスクブランクス、液晶ディスプレイ用透明導電膜の製造・販売事業を受け継ぐ形で現在の本社・工場のある秩父市に設立された。当時のアルバックは、装置を製造販売するだけでなく、自社製造していた小型蒸着装置・スパッタリング装置を用いて新たな製品を作り出そうとしており、応用事業をより一層広げようという目的を持っていた。その結果として、1972年には低反射クロム膜マスクブランクスを世界に先駆けて開発するなど、集積回路の微細化に多大な貢献を果たしている。そしてその事業をさらに本格化するために、ULCOATは独立会社として誕生したわけである。
現在では、創業時からの中心製品である半導体用マスクブランクスに加え、世界で60%近くのシェアを誇るディスプレイ(LCD、有機ELなど)用大型マスクブランクスや、ガラスMEMSなどの製造・販売を行っている。
資本金1億円、従業員数190名。(2016年12月現在)

今後は設備投資を拡大
グループ一体となって技術・品質の向上を目指す

半導体用マスクブランクス(上)
ガラス基板にキズがないか、暗室で一枚ずつ
目視で確認する(下)

現在のULCOATの半導体用マスクブランクスは、汎用品向けのビジネスが中心で、ハイエンド向けのシェアは決して高くない。今後、ハイエンドの分野により一層参入するために、設備・人材の投資を拡大している。
2014年から高品質化プロジェクトの取り組みを開始し、2016年には技術開発部を再設置してこのプロジェクトを引き継いだ。また、アルバック、アルバック東北株式会社、アルバックテクノ株式会社といったグループ各社と連携して、世界最高品質のマスクブランクスを製造するプロジェクトも発足している。今後はグループ一体となって品質向上を加速していく。
ディスプレイ用大型マスクブランクスでは、世界最大級の2,100mm×2,600mmサイズの製造が可能で、中でも液晶ディスプレイ向けの多くにULCOAT製が使われている。現在はさらに大きなサイズの開発・設備投資を進めており、世界の大型マスクブランクス製造を牽引している。
ディスプレイ関連事業のグローバル化によりULCOATもその波に追随する形で、2001年にはULCOAT.TAIWAN,.Inc.(以下、ULT)をアジア向け生産拠点として台湾に設立した。これにより、日本国内と台湾の2ヶ所の生産拠点を持つことで、さらなる安定供給にも配慮している。今後は台湾にも積極的に設備投資を行う予定だ。