真空ひばりの真空教室 Vol. 9
はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。
この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪
見た目の面積を表す幾何学的表面積に対して表面の粗さを加味した真表面積
Vol.8でお話した固体表面の気体吸着と脱離の現象を利用して、物質に吸着している気体の量を測定することによって、物質の「真表面積」を測ることができます。今回はその真表面積についてのお話です。
具体的には、物質の表面にくっついている気体を脱離させて、その量を測定することによって、本当の表面積の大きさがわかるということ。真表面積は、目で見えている表面積の何倍も大きいというのが一般的です。
真表面積を測る方法はいくつかありますが、最も簡単な方法は、密封した容器の中で、高感度のバネはかりに測りたいサンプルを吊るして、窒素ガスを充填して湿度を一定に保つという方法。そうすると、サンプルには、窒素の気体分子が吸着して次第に重くなって、あるところまでくると、それ以上増えなくなるため、その時点で単分子層が形成されたことがわかります。
このときに圧力を変えながら測定すると、圧力が低いところでは少ししか重くならず、圧力を高くしていくと、あるところで飽和となって、また増えていきます。これらの動きは、材質によって違ってきますが、計算によって単分子層ができたと思われる量を測ることで、真表面積を算出することができます。
幾何学的表面積と真表面積との比を「粗さ係数」と呼び、「幾何学的表面積÷真表面積」で表します
真表面積を知ることで真空を早くつくる
真空装置で真空をつくる場合、物質表面に吸着した気体分子は、あらかじめ極力減らしておく必要があります。そのためにどうするかというと、いったんくっついた気体分子を表面からたたき出してあげればよいわけです。その一番簡単な方法は、装置内の温度を上げることです。これを「ベーキング」と呼び、数十度から数百度の前後の加熱で気体分子は早くでていきます。そういえば料理法で、オーブンで調理することをベーキングと呼びますが加熱処理という意味では一緒です。
他にも、プラズマ放電から発生したイオンで表面をたたくといった方法とか、いろいろあります。どの程度の処理を行うかを判定するためにも、真表面積を知ることは、とても重要なことなんです。
用語解説
窒素ガス
大気中の容積の約78%を占める無色無臭の気体。窒素分子解離熱は大きく、常圧で3000℃に熱しても解離は認められず、化学的にきわめて不活性なガスと呼ばれている。