高精度・高精密・高効率な新たな撹拌を提案

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96ウェルプレートを直接撹拌できるシステム微量精密撹拌機 MICROPADDLE

アルバックでは低回転から1min-1刻みの回転速度設定、最大12種類での異なる回転速度での同時撹拌も可能で、高精度・高精密・高効率な新たな撹拌を提案しています。今までありそうでなかった撹拌機MICROPADDLEの開発と製品化を実現した川越徹也氏(株式会社アルバック 規格品事業部)と小関智光氏(株式会社アルバック 技術開発部)に話を伺いました。

撹拌機の開発と製品化の経緯を教えてください。

川越:以前から販売している分子間相互作用解析装置AFFINIXシリーズの引き合いで、ある大手製薬会社さんを訪問していました。その装置は微量の溶液を撹拌する機能がついているのですが、それを見たお客さんが独り言のように「こんな微量液体を精密に撹拌できる攪拌機があれば売れるよなぁ」といったのです。その日はそれで終わったのですが、帰社してからもその一言が引っかかっていたので、開発担当に顧客の声として紹介しました。すると「それは面白い」という話になり、すぐにその顧客に攪拌機能だけを大幅拡張した製品コンセプトを提案してみようということになりました。コンセプトはハイスループットスクリーニングが要求される製薬会社を意識して、96ウェルマイクロプレート内の200uL程度の微量の液体を攪拌棒で撹拌する、しかも撹拌精度が非常に高いというものでした。

小関:以前から製品の要素技術を他に転用できないかとアンテナは張っていましたので、営業からの情報に対して非常に興味を持ちました。そこでまずは調査をしてみようと思い、コンセプト原案を営業と考え、顧客に提案しました。その際にはイメージしやすいように3Dモデルで機器の概略イメージを描いたり、3Dプリンタでモックアップを作って写真に撮ったり、イメージが伝わりやすいようにしました。すると非常に受けがよく、是非作ってほしい、評価してみたいという話になったのです。その時点で、特に開発費予算があるわけでもなかったので、実験室に転がっていた以前の開発試作機の残骸を組み合わせて、迅速にお金をかけずにプロトタイプを作り、お客さんの実験室に置いてきました。正直、外見はボロボロで使い勝手も最悪なプロトタイプでしたが、それでも評価に使用してくれて数ヵ月後には「精度が高い、使える」という評価をいただきました。今から考えると、よくあんなプリミティブな機器でデータを出してくれたな、と思いますが。でもそのおかげで我々のコンセプトの正しさが迅速に示すことが出来た。あそこでプロトタイプ製作の予算取りから開発まで社内でじっくり時間をかけていたら、相当時間を無駄にしていたと思います。当時「リーンスタートアップ」という考え方が出てきたんですけど、それに感化されて製品コンセプトを早期に検証しようと動いたのがよかったかもしれません。結局、お客さんの一言から始まって2年後には製品化することが出来ました。アルバックにはある程度アンダーグランドの開発を容認する社風があったのでそれもよかったのだと思います。

MICROPADDLEの特徴を教えてください

MICROPADDLE本体
MICROPADDLE

川越:MICROPADDLEの特徴は、1-3000rpmという低速から高速までの幅広い撹拌範囲と、撹拌精度が非常に高いこと。また一度に12種の回転数条件を設定でき、96個の反応ウェルを同時撹拌できることです。これまでのマイクロプレートの撹拌はプレート全体をぐるぐる回すような方法が一般的で、精度は低いし、効率のよい撹拌は難しいということでしたが、それしかないからみんなそれでやっていたような状況だったようです。MICROPADDLEを紹介すると、「これなら効率よく混ぜられそうだ」「撹拌が重要なことはわかっていたが、どうしようもないと思っていた」「いいもの見せてもらった」等、これまであきらめていた部分が解決するということで総じて好評でした。実際、最初に使用してくれたある大手製薬会社の方は、先の薬剤学会で「ハイスループット処方設計スクリーニング」と題して発表を行い、従来法よりも高精度にかつ多量のサンプルを処理できるということを示しています。また、動画にもあるように混ざりづらい溶液の混合、エマルション作製などの用途になると従来の攪拌機では全く混ぜることが出来ない。この場合にもMICROPADDLEは非常に有用だと思います。

MICROPADDLEの今後の展開を教えてください

川越:まだ製品を知らない人も多いですし、様々な場所でPRしていきたいです。5月にドイツの展示会に出品したときは、欧米の自動分析装置メーカーや代理店からも好評でした。「また、ジャパニーズが面白いもの作ってきたぞ」みたいな感じで。11月のアメリカ薬学会でも好評でした。製薬業界は海外市場が大きいので海外でもPRしていきたいです。これまでになかった製品なので、用途事例を増やして「使える」ということをアピールしていきたいです。

小関:製薬業界はハイスループットスクリーニングというイメージが強いですが、まだまだアナログな実験も多いと感じています。ハイスループット高精度撹拌を用いることで製薬会社の多くの場面で業務を大幅に改善できると思っています。今は溶出試験、溶解度試験、薬剤結晶スクリーニング、エマルション作製などの用途に適用していますが、顧客とのつながりを密にしてもっといろんなニーズを拾っていければいいと思っています。アルバックが製薬向け攪拌機の開発というと違和感があるかもしれませんが、もともと製品として医薬用凍結乾燥機も扱っているメーカーですから、この市場向けの製品を今後も多く出していきたいと思います。

微量精密撹拌機 MICROPADDLE 製品紹介Video

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