真空ひばりの真空教室 Vol. 4
はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪
真空は、圧力に応じて「低真空」から「極高真空」まで5段階に分類されている
Vol.3では、「真空を表す単位の圧力は、移り変わってきた」というお話をしました。今回はその「圧力」の範囲に応じた分け方についてのお話です。
通常の大気圧は105Paを示しますが、これより低い気圧の場合が「真空状態」ということにされています。現在、技術的につくれる最も低い圧力は「10-12Pa」とも言われていて、ひと言で真空と言っても、なんと104Paから10-12Paまで17桁にも及ぶ範囲に広がっているんです。
JIS(日本産業規格)では、真空を圧力の範囲によって5段階に分類されています。(※2021年9月改正)
低真空(low vacuum)大気圧未満、102Pa以上
中真空(medium vacuum)102Pa未満、10-1Pa以上
高真空(high vacuum)10-1Pa未満、10-6Pa以上
超高真空(ultra high vacuum)10-6Pa未満、10-9Pa以上
極高真空(extremely high vacuum )10-9Pa未満
日本では、1990年代に「極高真空」を得るためのポンプやいろいろな材料、それと得られた圧力を測る計測器の開発が活発に進められました。でも、現在は、先端産業によく使われている圧力領域はほとんど「超高真空」まで。「極高真空」は出番待ちといった状況のようです。
これらの5つの圧力領域ぴったり合うわけではないですが、それぞれの圧力によって使用する排気ポンプ、真空計、材料などは変わります。
それから、作られた真空の残留ガスの成分も圧力領域によって異なることが知られています。JIS(日本工業規格)の「真空を用いた工業製品を作るための規格 JIS Z 8126-1」では、圧力領域と代表的なポンプ、真空計、残留ガス区分が記載されています。
圧力だけでなく、質も重要なポイント
真空について考えるときには、圧力領域だけに目が向きがちですが、実は「質」も重要なポイントなんです。「真空の質」とは、どのような気体が真空装置内に残っているかが関係しています。
たとえば、真空状態にした容器の中で対象物に薄い膜を付ける装置を成膜装置と言いますが、その成膜装置の場合、油などの有機成分が多く含まれた真空装置で成膜した膜は、たとえ成膜前に同じ圧力まで装置を排気したとしても、油が含まれていない成膜装置で成膜した膜に比べて、密着性が極端に悪くなってしまうんです。
そのためにどうするか。油が装置内に紛れ込まないように潤滑油などを使うポンプの使用を控えたり、使用する材料の選択はもちろん、洗浄を注意深く行ったりすることが必要になります。
用語解説
圧力
圧力の強さは(力)÷(面積)の単位で表されます。国際単位系では、1㎡に1N(ニュートン)の力が一様にかかっているときの圧力の強さが単位になる。これをパスカルと呼びPaで表す。
医療・医薬品・ヘルスケアにもアルバック
「アルバックは何の会社ですか?」と聞かれることがしばしばあります。しかし、「真空装置メーカーです」とお答えしてすぐに理解されることは実に稀で、更に「真空技術の研究・応用で世の中に貢献する会社です」と言葉を重ねると一層、相手を混乱させてしまうのはよくあることです。一方で、「どこに使用されているのですか?」と問われると、今度はこちらが困惑してしまいます。何故なら、「あらゆるところに真空技術は使用されています」が正直かつ正確な答えだからです。その「あらゆるところ」の一つには勿論、医療業界、ヘルスケア業界、とりわけ製剤業界が挙げられます。
薬を製造する機械も信頼できますか?
一般的に、薬は開発から製品化されるまでに約十年以上かかると言われています。私たちの身体に直接大きな影響を与えるのですから、様々な研究や試験を経ていないと、安心して薬を服用できません。より正確な試験データを測定できたり、実験に必要な素材がすぐに手に入る高性能な機器が、日々開発者の方々の研究をサポートしているのです。
加えると、たとえ新薬が世の中に出ても、品質を保ったまま多くの人にお届けするのは容易ではありません。不純物のない高純度を維持した薬を大量生産するのは、製剤の機械です。新薬開発過程は勿論のこと、実は薬の製造機械にも私たちの健康は委ねられています。
アルバック装置の真空技術プロフェッショナル性
冒頭の通り、アルバックはグループ全体で製剤業界へ深く関わっています。真空の応用技術として、温度コントロールがあり、微妙な温度コントロールをも得意とするアルバックグループは薬の研究段階から製剤まで、あらゆる場面でサポートしています。
研究・開発・分析センター
薬剤の研究や開発では研究者の方々の多大な時間と労力が費やされています。それが少しでも短縮されたら、彼らのお手伝いだけでなく、患者さまにも逸早く薬をお届けできるのではないでしょうか。
アルバックではその一端として、研究機関では欠かせない液体窒素ジェネレーターや、微量精密攪拌機をご使用いただいております。
製剤現場
製剤では一般的に、原薬の反応、蒸留、混合等を経て長期保存する為、乾燥や液充填の工程へと進みます。普段、皆さまのお手元に届く乾燥状態になる段階です。例えば、薬で必要な成分だけが高純度で抽出されたり、より患者さまが飲みやすい形状になれば「良薬は口に苦し」なんてことわざは忘れ去られてしまうかもしれません。
そんな近い未来を叶える為に、アルバックは60年以上にわたって培われた真空技術で高性能な真空蒸留装置や、凍結真空乾燥装置をご提供しています。
飽くなき真空技術の応用研究
既に医療・医薬品、そしてヘルスケアの世界で我々アルバックが60年以上にわたって培った真空技術は浸透しています。真空技術応用のプロフェッショナルとして、皆さまの健康の一端をあずかる真空装置をお届けしています。
しかし、その研究と開発はまだ終わってはおりません。アルバックは今この時も挑戦を続け、縁の下の力持ちとして見えないところで、真空技術でまた新しい何かの実現を目指しています。
真空ひばりの真空教室 Vol. 3
はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪
真空を表す単位の圧力は、移り変わってきた
Vol.2では、「空間から気体分子を吸い出すことで真空をつくることができる」というお話をしました。真空とは空っぽの状態ではなく、存在する気体分子の量によることも何となくわかりましたか?
そこで、今回は真空を表す単位のお話です。真空の程度は真空度と言いますが、「圧力」という物理的な量で表すようになっているんです。
圧力とは、単位面積あたりに加わる力のことで、国際(SI)単位では、1平方メートル(㎡)の面積につき1ニュートン(N)の「N/㎡」や、「 Pa(パスカル)」が使われています。
圧力の単位が使われ始めたのは17世紀頃。イタリアの物理学者でガリレオの弟子のトリチェリによる水銀柱を使った実験から、水銀柱の底面にかかる圧力を基準にした、「mmHg(ミリメートルエイチジー、または水銀柱ミリメートル)」が使われていました。圧力を測定する圧力計が水銀柱を用いていたことに関連してなのか、この水銀柱をもとにした単位が長い間使用されていたんです。
圧力を表す単位はmmHg→Torr→Paへ1960年代になると「mmHg」に替わって「Torr(トル)」が使われるようになりました。水銀柱の実験をしたトリチェリにちなんでつけられた単位です。mmHgとTorrは、厳密には定義が異なるため1/7,000,000だけ数字が異なりますが、実用的には1mmHgと1Torrは同じとして使っても問題はなかったようです。
ところが、ずっと長く使われてきたmmHgは新計量法の施行により1993年から、商取引に使用してはいけない単位に分類されてしまいました。そのため文書や論文では「国際(SI)単位」の「Pa」を使用することが奨励され、実際にPaで圧力を表すことが多くなっています。
Paは、低地と山頂で水銀柱の高さが異なることを示したフランスの数学・物理学者、パスカルにちなんで名づけられた単位です。ちなみにパスカルといえば、「密封された容器の中の静止流体の1点に圧力が加わるとどの地点でも圧力は等しくなる」という「パスカルの原理」をはじめ、気体や圧力の法則に関する業績をあげた人ですね。
日本では天気予報で、気圧を表記するときに、以前は「mbar(ミリバール)」を使っていましたが、現在では「hPa(ヘクトパスカル、1hPa=100Pa)」を使っているの、知ってた?
Barはセンチメートル・グラム・秒を基本としたCGS単位系のdyne/c㎡の圧力単位で106dyne/ c㎡=1barとなります。今回は、「真空」は「圧力」の量で程度を表すということ、その「単位が時代とともに移り変わってきた」ということについてレクチャーしてみました。
用語解説
水銀柱
気圧とつりあう水銀柱の高さを測定することによって、水銀柱の圧力、すなわち気圧を算出することができる。
パスカルの原理
真空ひばりの真空教室 Vol. 2
はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪
空間から気体分子を吸い出すことで「真空」をつくることができる!?
Vol.1では、真空について「空間に何もない状態ではない」「人が真空ポンプを使って作り出した低圧状態である」というお話をしましたが、では、「空気は何でできているのか」知っていますか?
空気の中に一番たくさん含まれているのが、窒素と呼ばれるガスで約78%。 次が酸素で約21%。もちろん酸素は、私たち人間をはじめ、生き物が生きていくために大切なものですね。その他には約0.93%のアルゴンなどで構成されています。
また、量は多くありませんが水蒸気や二酸化炭素、自動車の排気ガス、あるいは私たちが匂いとして感じる有機化合物など実際の空気にはとてもたくさんの物質が混ざっています。私たちの周りにある気体は、このような物質のとても小さな分子が、高速でさまざまな方向へ動き回っている状態としてイメージすることができます。私たちはそれらのたくさんの分子の集まりを空気として感じているんです。
空気中の気体分子を真空ポンプなどで吸い上げてあげることで、容器の中の気体分子の個数が少ない状態、つまり真空を人工的に作り出すことができるんです。
ちなみに、このことをもとに科学的に気体の性質を議論する学問を「気体分子運動論」といいます。
そして分子の数がとても多い場合、分子全体を統計的に観察することが可能になります。これは「統計力学」として知られ、気体が関係するさまざまな現象が説明できます。
大気圧に逆らって「真空」をつくることは困難
私たちは、昔から気体について、このような現象や知識を理解していたわけではありません。
大気の押す力、「圧力」は意外に大きく、1㎡の平面に約10t(10,000kg)、ダンプカーの積載量分くらいの力がかかります。
この大気圧に逆らって真空状態をつくって維持するのは大変なことです。真空を作り出す方法や道具がなかった頃は、アリストテレスが「自然は真空を嫌う」と考えたのも当然かもしれませんね。
技術が進んだ現在でも、気体分子がまったくない状態をつくることは、とても難しいことなんです。
用語解説
気圧
気圧とは大気の圧力のこと。単位面積の上に大気の上限まで鉛直にのびた気柱の重さに等しくなる。そのため地表より高い所にいくほど、上部の気柱が短くなるので気圧は低くなる。
真空ひばりの真空教室 Vol.1
はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪
空間に何もない状態が「真空」ではないって、知ってた?
真空は、どのような状態をいうのかわかりますか?辞書では、「空気などの物質がまったくない空間」「何もない状態」っていうことになっていますが、では「まったく何もない空間」とはどのようなものなのでしょうか?
真空という概念は、意外に古くからあるんです。古代ギリシャのデモクリトスという名前の自然哲学者は、「原子(アトモス)」が真空という空虚な宇宙空間の中を運動していて、目に見えないくらい小さなさまざまな形と大きさをもったアトモスの運動の仕方で、いろいろな現象を説明できると唱えています。
これに対して、もう一人の哲学者、アリストテレスは、「自然は真空を嫌う」という「真空嫌悪説」を唱え、デモクリトスの考えに反対したことは有名な話です。知ってた?
「真にまったく何もない空間」を理解することの難しさは、昔も今も変わらないということかも知れませんね。
ところで、真空技術における真空とは、このように難しい話ではないんです。日本工業規格(JIS)では、「真空とは、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態で、圧力そのものではない」と定義しています。
感覚的に理解しやすい「減圧」や「低圧」という言葉を使うと、「大気より減圧された低圧状態が真空である」と定義することもできます。つまり、真空技術における真空とは、まったく何もない状態ではなく、「大気中の物質がある程度残留している低圧状態のことをいう」ということになります。
でも、そうなると混乱すると思うので、少しだけわかりやすく説明します。例えばエベレストなどの高山になると高いところではかなり空気が薄く、気圧は地表の3分の1しかない低圧状態にあるわけですが、普通は真空状態にあるとはいいませんよね。これはJISでいう「特定の空間」ではないからで、「真空」=「低圧」ではないんです。「真空」と「技術」が組み合わさった「真空技術」では、人が真空ポンプを使って作り出した低圧状態を「真空」であると考えることにしているんです。
だから、「真空とは空間に何もない状態ではない」ということ、わかりましたか?
用語解説
日本工業規格(JIS)
1949年に制定・施行された工業標準化法に基づいて、日本工業標準調査会の審議を経て、経済産業大臣、国土交通大臣など主務大臣が定める国家規格。
エネルギー問題は、地球規模の社会課題。省エネ・創エネにもアルバックの真空技術が活かされています。
「省エネ」に貢献するモノと聞いて、どんなモノを思い浮かべますか?高輝度LEDランプや高効率モータによる節電などはイメージし易いですね。自動車の燃費改善には、軽量化が重要です。ガソリンタンクや窓ガラスの樹脂化や、ハイブリッドカーや電気自動車ならモータやバッテリーの軽量化も始まっています。実物を目にすることは、なかなかありませんが、パワーデバイスは、電力を効率よく制御するのに欠かせません。「創エネ」に貢献するものはどうでしょう?クリーンエネルギーなら、太陽電池や風力発電でしょうか。これらに共通しているのは?そうです、これらの「省エネ・創エネ」を実現する製品の製造過程で、真空技術が欠かせないのです。
「省エネや創エネにつながる製品」をつくる過程にアルバックの製造装置が活躍
2つの視点で「省エネ・創エネ」の実現を図ります。大電流を制御するために必要なパワーデバイスや、長寿命、高輝度のLEDの製造には真空装置が不可欠です。また、創エネの代表格である太陽電池の製造過程にも、多くの真空装置が使われています。今後も、より省エネ・創エネ性能が高い製品を生み出すために、アルバックの真空装置の活躍の場はますます広がっていきます。より安心、安全な暮らしの実現に向けて、省エネ・創エネ分野も開発の重要領域に含め、未来に向けた開発にも力を入れています。お客様の工場での省エネに貢献アルバックは、お客様の工場で使用するエネルギーを節約する成膜装置や、排気装置を供給することで、地球環境への負荷を減らし、省エネに貢献しています。
顧客工場の省エネ・創エネに貢献するアルバックの製造装置
アルバックの真空装置は、液晶や有機ELといったスマートフォンや大型TVの高精細ディスプレイや半導体・電子部品の製造工程や、食品や医薬品の凍結乾燥、金属の溶解など幅広い分野で数多く使われています。お客様の工場での省エネを実現するため、真空装置自体の省エネ化を進めています。
太陽電池
再生可能エネルギーの代表格として、メガソーラーのみならず広く一般家庭へも普及しています。より高い発電性能を達成するため、さまざまな方法で変換効率向上の取り組みが行われています。
アルバックは、1980 年代の太陽電池黎明期から現在に至るまで、さまざまなかたちで太陽電池の製造にかかわってきました。引き続き真空成膜装置やイオン注入装置で、太陽電池の高性能化に貢献してまいります。
● インライン式スパッタリング装置 SCHシリーズ● インライン式プラズマCVD装置 CCVシリーズ● インライン式Cat-CVD装置 CIVシリーズ● イオン注入装置 PVIシリーズ
太陽電池関連の装置はこちら
高輝度LED
オフィスや家庭では、省エネの代表として、蛍光灯や白熱灯からの置き換えが進んできました。また、広告などの屋外表示や、自動車のヘッドライトなど、LED の活用範囲は、ますます拡大しています。
アルバックは、真空蒸着やスパッタリングといった成膜装置やエッチング装置、プラズマCVD 装置など従来型から高輝度タイプまで、各種LED の製造工程に貢献してまいります。
● ドライエッチング装置 NEシリーズ● スパッタリング装置 SIVシリーズ● 蒸着装置 eiシリーズ
高輝度LED関連の装置はこちら
次世代自動車
環境にやさしいハイブリッドカーやEV(電気自動車)を多く見かけるようになってきましたが、燃費改善など次世代自動車への取り組みはまだまだ続きます。その一つが軽量化です。ポリカーボネイト(PC)樹脂をサイドウインドウやリアウインドウに用いることにより、大幅な軽量化が期待されます。
アルバックは、樹脂グレージング表面に硬化膜を形成し、耐摩耗性を向上させるプラズマCVD装置を提供することにより、次世代自動車の軽量化、燃費低減に貢献してまいります。
● PC樹脂グレージング量産用プラズマCVD装置 ULGLAZEシリーズ● 希土類磁石量産装置 Magriseシリーズ
パワーデバイス
家電製品や電車、自動車などに電力を供給する際には、それぞれに合った電圧、周波数に変換する必要がありますが、その制御を行うのがパワーデバイスです。より大きな電圧を扱ったり、変換の際のエネルギーロスを最小化したり、変換のスピードを速くしたりするため、従来の素材であるSiからSiC、GaNといった新たな素材を用いたものも製品化されています。
アルバックは、真空成膜装置やエッチング装置、イオン注入装置などで、従来のSi素材のみならず、新たな素材でのパワーデバイス製造工程に貢献してまいります。
● スパッタリング装置 SRHシリーズ● SiC用イオン注入装置 IHシリーズ● エッチング装置 NEシリーズ
パワーデバイス関連の装置はこちら
顧客工場の省エネ・創エネに貢献するアルバックのコンポーネント
ドライポンプ省電力化アタッチメント ECO-SHOCK ES4A
ドライ真空ポンプは、真空を利用する生産ラインの中でも消費電力が大きい機器。これまで、真空装置の仕込み取り出し室を頻繁に排気する用途やシールガスを多く使用するドライ真空ポンプの消費電力を削減することは困難でした。「ECO-SHOCK ES4A」はこの用途でも大幅な省エネを実現。既設のドライ真空ポンプにも後からの取り付けが可能です。
ECO-SHOCK ES4Aの詳細はこちら
凍結乾燥工程モニターシステム
凍結乾燥(フリーズドライ)とは、水溶液や食品を凍結させ圧力をその凍結温度の飽和蒸気圧以下にすることで水分を昇華させる乾燥方法。食品のほか、医薬品の製造にも多く使われています。これまで、対象物に温度センサーを挿入して温度測定し、人が乾燥終点を判断するのが一般的でしたが、未乾燥部分が残るのを嫌がり、十分すぎる余裕時間を設定し、無駄な時間や余分なエネルギーロスが発生していました。「DRYMONI」により、乾燥工程の「見える化」が実現。品質管理の厳しい医薬品業界でも認められ、アルバックの凍結真空乾燥装置に装備しました。既設の旧型装置にも後から取り付けできるスタンドアロンタイプも取り揃えています。
凍結真空乾燥装置のラインアップはこちら
「ライフイノベーションアワード2015(AOMORI)」受賞
アルバック東北㈱は、青森県より「ライフイノベーションアワード2015(AOMORI)」を受賞した。 「ライフイノベーションアワード」は、青森県のライフ(医療・健康・福祉)分野における産業創出に貢献し、革新的(イノベーティブ)かつ独創的(クリエイティブ)、挑戦的(チャレンジング)な取り組みについて表彰するもので、受賞対象は、「医工連携」「サービス」「プロダクト」の3部門からなる。アルバック東北は「医工連携」部門での受賞となった。
受賞理由
受賞式でスピーチするアルバック東北㈱社長 加藤 丈夫
地元医療機関と連携し医療安全の向上に資する周辺機器等の開発・改良製造に力を入れ、医工連携の推進に努めている。主な開発製品は3P電源ケーブルを容易な方法で高度な測定ができる携帯型電源ケーブルチェッカー、酸素流量計の精度を効率的に定期点検できる酸素流量計チェッカーなど。
携帯型電源ケーブルチェッカーについて
豊富なカラーバリエーション(全6色展開)
電源線と保護接地線の3本を同時に簡単に測定でき、しかも保護接地線はJIS 規格で求められている低抵抗が測定できるという特徴を持っている。近年、手術室や集中治療室(ICU)などの医療現場では、さまざまな高性能電子医療機器が活躍している。しかし、通常の汎用計測器では確認できないほどの微弱な漏電がそれらの機器から発生した場合でも、「ミクロショック」と呼ばれる電撃が患者を襲う。このミクロショックによる万一のリスクを回避するために、「JIS 医用安全規格」において、医療機器の保護接地抵抗規格(0.1 ~0.2Ω)が定められている。規格が定めている抵抗値は低く汎用計測器では測定が難しいため、電気技術者が専用測定機器を用いて測定している。アルバック東北は、2~3年ほど前に青森県が進める医工連携事業化推進策をきっかけとして、地元の八戸市民病院などの要望に応えるため、約2 年の歳月を費やし、簡易な方法で測定できる携帯型電源ケーブルチェッカーの開発に成功した。この携帯型電源ケーブルチェッカーは、特別な知識や専門機器を用いることなく、医療機器電源コードの3P プラグを差し込むだけでJIS 安全規格の抵抗値をすばやく判断できる。この受賞を足掛かりとして新規事業分野への更なる前進を進めていく。
お問い合わせ先アルバック東北㈱TEL:0178-28-7839URL:https://www.ulvac-tohoku.com/business/medical-device-checker/power-cable-checker/
スパッタリング膜でPVCレコードの高品質・高音質化を実現
真空薄膜技術を駆使し、摩耗性、熱伝導性、静電気発生の弱点克服
アナログレコードは、1980 年代初頭に登場したデジタルCD によって、それまで長く続いた主役の座から一気に駆逐され、わずか数年で音楽ソフト市場の舞台の隅に置かれることになった。かといって、完全になくなったわけではなく、一部のオーディオマニア向けに細々と生産を続けてきた。近年の傾向として、CD で育った若者層を中心にアナログレコードの需要が増大してきている。その大きな理由は、CD では味わえないレコードジャケットのダイナミックさ、オーディオセットの高性能化によるアナログ独特の高音質によるものなどであろう。しかし、音響製品の高性能化は進んでいるものの、1940 年代後半に登場したポリ塩化ビニール(PVC)製LP レコードは改質・改善のない当時のままである。今回の「暮らしとアルバック」は、そのレコード盤の弱点を真空技術で克服し高品質・高音質化を実現したULVAC TAIWAN INC. の「Prolayer」レコードにスポットをあてた。取材協力:ULVAC TAIWAN INC.(優貝克科技股份有限公司)
真空技術が貢献する「Prolayer」レコード
ULVAC TAIWAN INC.(本社:台湾新竹市、以下UTI)は1981年に設立され、アルバックのグローバル生産拠点の一つとして活動しているグループの海外中核企業である。UTIの本業は、主に半導体や液晶テレビなどの電子機器産業向けに真空装置の製造やフィールドサポートを行っているが、このほどユニークな活動として、スパッタリング装置という薄膜形成装置を使って「Prolayer」レコードというネーミングで画期的なスパッタリング膜レコードを開発した。
スパッタリング膜による「Prolayer」レコードとジャケット
世界的に再注目されているアナログレコード
アナログレコードが最初に登場したのは78回転レコード(シェラック盤)で、収録時間は片面5分程度だった。次いで高密度のポリ塩化ビニール(polyvinyl chloride :PVC)を用いたことにより、音源である溝幅を極端に狭くすることが可能となり、片面30分以上という長時間収録のLP(Long Play)レコードが主流となった。LP レコードは、1940年代後半に開発され、1950年代から従来の78回転レコードに代わり、1980年初頭にデジタルCDが登場するまでの半世紀にわたって、常に音楽メディアの中心にあった。1990年代に入り、アナログレコードはいったん廃れたかに見えたが、2000年代半ば頃から生産枚数は徐々に上昇しつづけ、一部のオーディオマニアはもちろんのこと、若者層がけん引役となって再び人気を盛り返そうとしている。
世界のアナログレコードの売上高推移
旧態依然のアナログレコードにメス
スパッタリング装置を背景に左からUTI 副総経理 呉 東嶸、 開発担当の陳 江耀、陳 俐燕、副総経理 魏 雲祥
アナログレコード時代からデジタルCD 時代を通して、レコードプレーヤーやCD プレーヤー、アンプ、スピーカーなどのオーディオ電子機器は、めざましいほどの進歩を遂げて高音質化に貢献しているが、PVC レコードは材質や製造工程などは旧態依然という状況で、オーディオ機器ほどの発展を遂げていないのが現状である。ではレコードは完成された商品かというと、決してそうではない。むしろ問題点の塊といっていい。その問題点とは、CDとは異なりレコード針で溝をトレースして音を出すため、針の接触面で発熱して組成変化が生じ、いつしか盤面の溝が傷つき、長時間使用に耐えられなくなることである。さらに決定的なのは、PVCという材質上の問題で、静電気が生じやすく、それが原因となってゴミやほこりが盤面に付着し、せっかくの心地よい音楽が雑音となることである。
スパッタリング膜採用によりレコードの問題点解決
オーディオ好きでもあるUTI 副総経理の魏雲祥は、レコード盤の欠点である「摩耗性に劣る」、「熱伝導性がない」、「静電気が生じやすい」、というこれらの問題点を真空技術で解決できないものか、と考えていた。そこで閃いたのが、レコード盤面上へ真空薄膜を施すことであった。真空を利用してつくられる薄膜にはいろいろな方法があるが、代表的なものとして、比較的手軽に利用でき、応用範囲が広い「蒸着法」、均質な大面積に適した「スパッタリング法」、気体にして高機能な化合物薄膜をつくる「気相成長法」の3つがあげられる。いろいろな試行錯誤の末、それを解決したのがスパッタリング装置によるモリブデンのスパッタリング膜であった。
「TAA 台北円山オーディオショー」で「Prolayer」レコードを紹介するUTI 副総経理 呉 東嶸
このスパッタリング膜は、PVC レコードと比べると融点で2,500℃、表面硬度は約30倍、熱伝導率は約1,300倍、それぞれ向上した。また滑らかな表面であるため摩擦力は半分以下になり、針圧による溝へのダメージが極端に下がりレコードの長寿命化にも貢献することが実証された。さらに、ナノレベルの薄膜であるため溝面の膜厚による音の再生劣化もないことも分かった。2015年春頃、この構想を高雄電気機器産業協会 主任委員の黄裕昌氏に持ちかけたところ、共同開発することとなった。2015年8月には「TAA 台北円山オーディオショー」に出品し、オーディオ評論家を招いて、台湾の著名ピアニスト顔華容さんによるチャイコフスキーのピアノ曲の生演奏、同曲の従来のPVC レコード、スパッタリング膜レコードによる「聴き比べイベント」を開催したところ、スパッタリング膜レコードは、オーディオ評論家から望外ともいえる高い評価を得た。スパッタリング膜レコードは商標申請中で、スパッタリング膜の量産化もほぼ目途が立った。今後、「Prolayer」レコードは、全世界デビューに向けてのターゲットとなるアーティストやアルバム楽曲の選定作業など拡販に向けて具体的にアプローチを図っていく予定である。
スパッタリング成膜方法 基板とターゲットを対向させ、数分の1Pa 〜数Pa 程度のアルゴンガス雰囲気の中でターゲットに数kV の負の高圧電圧をかけて放電させる。するとプラズマが発生して、アルゴン原子はプラスイオンとなってターゲットに衝突。叩き出された原子が基板上に堆積薄膜を形成する。この薄膜形成をスパッタリング法と呼ぶ。
出典元:ULVAC広報誌https://www.ulvac.co.jp/news/prm66_201604/
ULVAC TAIWAN INC.優貝克科技股份有限公司http://www.ulvac.com.tw(中国語繁体字サイト)