真空教室 - ULVAC
TOP-1.jpg

加速度センサ内のデバイスはすべて真空中でつくられる Vol.20

真空ひばりの真空教室 Vol.20 はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪ 加速度センサ内のデバイスはすべて真空中でつくられる 科学実験や地震計などで加速度を計測する加速度センサは、ゲームのコントローラや携帯電話の歩数計など私たちの身近なものにも使われていますが、「MEMS(メムス:Micro Electro Mechanical System)」と呼ばれる技術を使ったセンサの代表です。加速度って速度の時間変化ですが、それを検出する方式には、圧電型や静電容量型、ピエゾ抵抗型などがあります。 このうち圧電型は、チタン酸バリウムなどの結晶にある向きの力をかけると、その力に比例して起電力が発生する性質をもちます。このような結晶体に錘(重り)を押し付けておくと、加速度運動によって錘が圧力を与えます。この圧力の程度に応じて起電力が発生するため、その大きさから加速度がわかるというしくみになっています。このチタン酸バリウムの薄膜は、もちろん真空中でつけられます。 真空技術を応用して加速度センサは小型化した 静電容量型では、錘を乗せた板(シリコン基板)に梁(ビーム)を吊るし、その下には金属電極を並べておきます。つまり錘を乗せてビームで支えられたシリコン板と金属電極とがコンデンサを作る形となります。コンデンサって理科の授業で実験したのを覚えていますか? そのコンデンサの静電容量は、電極の間隔に反比例するため、加速度運動によって、錘を支えるビームがたわむと静電容量が変化します。そのとき、金属電極に出入りする電流を測定することで静電容量の変化がわかり、そこから加速度の変化を知ることができます。 いっぽうシリコン基板にイオン注入機でホウ素を打ち込んでおくと、その基板に力が加わったときに、抵抗値が変化するようになります。これをピエゾ抵抗と呼び、その抵抗値の増減から加速度の大きさと方向がわかります。MEMSという半導体の微細加工を応用した技術を使うことで、加速度センサは驚くほど小型になりました。こんなことからも、真空技術は私たちの生活に欠かすことができないものであることが、よくわかると思います。 用語解説 静電容量 コンデンサなどが、電荷を蓄える能力を表す量のこと。コンデンサの極板間に電圧をかけると。両極板上に電圧に比例した電荷が蓄えられる。 アルバックホームページ
TOP-1.jpg

様々な真空技術が利用されているハイブリッドカー Vol.19

真空ひばりの真空教室 Vol.19 はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪ 最先端の真空技術が利用されているハイブリッドカー 今回は、複数の動力源を持つ自動車である「ハイブリッドカー」についてのお話です。自動車のメカニズムは、エンジン部分はもちろんのこと、安全・信頼性のためのさまざまな高機能部品をはじめ、エレクトロニクス技術の集大成で成り立っていることは、みんなよく知っていると思いますが、ハイブリッドカーには、さらに高機能な電子部品が多数必要なんです。 そのため1台あたりの半導体使用量を換算すると、6インチサイズのウエハ、ほぼ1枚分を消費し、これはデスクトップパソコンの8倍の使用量と言われています。こうした重要な役割を担う電子部品製造に真空技術は欠かせないものとなっています。 ほとんどのユニットで利用されている真空技術 ハイブリッドカーは、エンジンや回生ブレーキ、発電機、モーター、パワーコントロールユニット、電圧昇圧回路、バッテリーなどのユニットで構成されていますが、ほとんどのユニットで真空技術が利用されています。 たとえば、モーターには、軽量化・高出力化を実現するネオジウム磁石が使われていますが、その製造は、真空溶解炉や連続式水素処理炉、真空焼結炉などで行われます。また、パワーコントロールユニット内で50μmという極薄ウエハに複合機能を盛り込んだパワーICは、高温・割れ・たわみを解決した極薄ウエハ専用の薄膜装置でスパッタリングやイオン注入によってつくられています。 それから高電圧・高出力対応のコンデンサは、ハイブリッドカーに不可欠ですが、このフィルムコンデンサは、巻取式真空蒸着装置で製造されています。さらにハイブリッドカーのバッテリーには、エネルギー密度が大きく、高電圧・高出力のニッケル水素二次電池が利用されますが、その負極に使われる水素吸蔵合金は、真空熱処理炉で加工されているんです。このようにハイブリッドカーの部品製造には、最先端の真空技術が利用され、真空技術なくしてハイブリッドカーは存在しないといえます。 用語解説 回生ブレーキ 電動機を発電機として利用することによって、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して発電することができるブレーキ。 アルバックホームページ
TOP-1.jpg

CCDなどデジカメの心臓部は薄膜技術の集大成 Vol.18

真空ひばりの真空教室 Vol.18 はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪ CCDなどデジカメの心臓部は薄膜技術の集大成 身近なデジタル製品の中で、静止画を撮影する機器がデジタルスチールカメラ、動画は撮影する機器がデジタルビデオカメラです。どちらも人間の視覚と同じ働きをもつ光学部品と電子部品からつくられています。光(画像)が、人間の水晶体に相当するレンズを通して、同じように人間の網膜に相当する受光素子(CCD、イメージセンサ)からの信号を、脳に相当する画像プロセッサで処理して、0と1のデジタルデータとしてメディアに記録しています。 光学部品や電子部品の多くは、真空薄膜技術でつくられている デジタルカメラの性能を決めるものとして、受光素子の画素数があり、画素数が多くなれば画質が鮮明になっていきます。ここでは画像をフィルタに通して、薄型テレビのところでもお話した光の3原色のR(赤)、G(緑)、B(青)ごとに、各々の光の強弱を受光素子で感じ取って信号に変えています。画素数を上げて画質を鮮明にするためには、個々の光学部品、電子部品の高機能化、小型化が必要となります。 そして、こうしたデジタルカメラの光学部品、電子部品の製造には、真空薄膜技術が切っても切れないものとなっているんです。デジタルカメラのCCDやイメージセンサ、画像処理エンジンとなるLSIなどのデバイスは、真空中でのスパッタリングやCVDを利用して成膜した後で、フォトマスクによる感光、エッチング、レジストはく離を繰り返して製造されます。 カメラのレンズには、反射防止膜がついていますが、これも真空蒸着でつくっています。このようにデジタルカメラやデジタルビデオカメラの中には、たくさんの真空技術を利用したデバイスが詰め込まれているんです。 用語解説CCD半導体の上につくられた電極に、次々と電圧をかけていくことによって、半導体中のキャリアの量を保ったまま移動させていく撮像素子。 アルバックホームページ
TOP-1.jpg

CD・DVDの反射膜 Vol.17

真空ひばりの真空教室 Vol.17 はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪ CD・DVDの反射膜も真空薄膜加工技術で成膜 ここでは真空を利用した薄膜加工技術をいろいろご紹介していますが、今回は光を利用して情報を記録するメディアとして代表的なCDとDVDのお話です。どちらも記録・再生が可能なタイプと再生専用のタイプがありますが、その動作原理は基本的に同じで、レーザー光を当てることによって情報を記録し、レーザー光の反射を読み取ることで再生をします。 このレーザー光を安定して反射するためにCDやDVDには、アルミニウムの薄膜が塗布されていて、その成膜には蒸着法、スパッタリング法といった真空薄膜加工技術が用いられているんです。 真空内での薄膜生成は、原子1個分の厚さも可能 DVDは、貼りあわせた2枚の円盤の間にデータを記録したピットと呼ばれる小さなくぼみがらせん状にたくさん配置されています。このピットの表面には、真空内で成膜をされたアルミニウムの薄い膜が付いていて、レーザー光を当てると段差の部分と平坦な部分で反射光に違いが生じます。この変化を読み取って0または1のデジタルデータとして判断して、再生ができるようになります。 このピットの大きさは0.4μm~2.13μmで、その差異を読み取るため、アルミの膜は数千Å(オングストローム:1Å=10-10m)レベルの厚さになっているんです。 ちなみにCDやDVDの膜厚は、数千Åですが、現在の薄膜製造技術では、数Åレベルの薄膜をつけることも可能です。この厚さは、原子1個が並んでいる状態で、スパッタリングで対応できるんです。この場合、スパッタリングのパワーを落とすだけでなくて、基板との距離を離して、しかも材料が入り込む入り口を狭くすることで、ほんのちょっとしか出てこないようにして基板を高速回転させます。こうすると基板には、少しずつ何回かに分けて材料がつき、単原子層がつくられます。ほかにも超高真空にして、るつぼからゆっくり材料を蒸発させて膜をつける方法などが用いられています。 用語解説レーザー低いエネルギー状態にある分子の数より高いエネルギー状態にある分子の数の方が多い物質に、共鳴する光を作用させて、光の増幅を起こさせるための装置。 アルバックホームページ
TOP-1.jpg

薄型液晶テレビに不可欠な薄膜製造技術 Vol.16

真空ひばりの真空教室 Vol.16 はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪ 薄型液晶テレビにも薄膜製造技術が不可欠 今回は薄型液晶テレビのお話です。 真空を利用した薄膜製造技術は、プラズマテレビや液晶テレビなど、どちらの方式の「FPD(フラットパネルディスプレイ)」にも多用されていますが、ここでは液晶テレビの「TFT方式」について、その利用技術を紹介します。 液晶テレビは、TFTをマトリックス状に並べた「TFTアレイ」とカラーフィルタの2枚のガラスで構成され、その5μmほどの間に液晶が閉じ込められています。TFTアレイは、画素ごとに電圧を制御して、その変化に応じて液晶の向きを変える役目をします。そしてその液晶の向きによって光の遮断や透過量が調整されて、そこを通り抜けた光は、カラーフィルタに備えられているR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色によって発色し画像を表しているんです。 透明電極は、エッチングで形成される TFTのこと、説明が遅れましたが、TFTとは、Thin Film Transistorの略で、直訳すると薄膜トランジスタのことです。TFTは、RGBの3原色それぞれにトランジスタ、透明導電膜、配線を薄膜で形成し、一つひとつの画素の点灯を制御します。液晶テレビの製造は、まずガラス基板への成膜からスタートします。ここでは前回のお話にも出てきたスパッタリングや、蒸着法の一つのCVDなどを利用して、透明導電膜やパターンニングするときの配線用の成膜を行います。 基板への配線は、まず膜をベタ付けしてから必要な配線を残すという形で行われますが、こうした成膜はすべて真空中でつけられます。また、基板を削って加工するエッチングには、ウエットエッチングと真空中で行うドライエッチングがあります。ドライエッチングは、膜と反応しやすい塩素やフッ素が含まれているガスを封じ込めて放電させて、発生したフッ素や塩素で材料を削り取っていくんです。さらに液晶を滴下した後で、真空中にTFT基板とカラーフィルタの貼り合わせを行うといった具合に、いろんなところで真空技術が利用されています。普段何も考えずにテレビを見ているけど、考えてみたらテレビってすごい技術の集合体なのね。 液晶の構造 用語解説 液晶ある温度範囲で液体のような流動性をもつと同時に、分子が規則的に配向するという秩序を伴う性質を持つ物質。 液晶ディスプレイの製造装置に興味がある方はこちら アルバックホームページ
TOP-1.jpg

薄膜に欠かせない真空技術 Vol.15

真空ひばりの真空教室 Vol.15 はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪ 薄膜の多くは真空の中でこそつくられる 今回はVol.10のプラズマのお話のときも出てきた薄膜についてのお話です。目覚ましいほどの発展を遂げるハイブリッドカーやスマートフォン、薄型テレビ、デジタル家電などの重要な部分の部品には、薄膜を利用した電子部品が数多く使われています。なぜかというと、超小型化、高機能、高信頼性、省資源、低コストに薄膜が大変貢献しているからです。こうした薄膜の製造は、真空装置によって主につくられています。真空技術は、バイテクノロジー、マイクロマシン、次世代コンピュータのキーテクノロジーであるナノテク分野にも必要不可欠な技術なんです。 nm(ナノメートル)の薄膜生成も可能に 薄膜製品というと、台所のアルミホイールやラップを思い浮かべますが、それらは材料を延ばしてつくるため、数10μmほどの薄さが限界です。これに対して、電子部品などの重要な役割を担っている薄膜の場合は、数μmから数nmの極薄の膜のことです。1μmの膜は1㎜の1,000分の1、nmという単位は1㎜の1,000,000分の1であるため、想像もつかないほどの薄さになります。こうした薄膜は、物理的に引き延ばしてつくることはもちろん不可能。実際には、真空中の材料を原子や分子状にバラバラな状態にして、積層するという高度な技術で可能となります。薄膜の応用分野はとても広く、LCD(液晶ディスプレー)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、有機EL(エレクトロルミネッセンス)などのFPD(フラットパネルディスプレイ)の製造や、ハードディスク、光ディスクなどのデジタル製品用部品製造、あるいは半導体の記録素子のDRAM(ディーラム)や強誘電体メモリ、半導体回路のアルミ・銅配線や高密度実装などの半導体製造、他にもハイブリッドカーや燃料電池自動車部品、太陽電池などの環境・エネルギー対応産業での利用、さらにはナノテクノロジーやマイクロマシンなどの最先端技術分野での応用など、人類にとって有益な製品を創出する原動力となっているんです。 用語解説誘電体絶縁体を電場の中に置いたとき、正電荷は電場の方向に、負電荷は電場と反対の方向に変位する現象が起こる物質を誘電体といいます。 アルバックホームページ
TOP-1.jpg

真空成形とは? Vol.14

真空ひばりの真空教室 Vol.14 はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪ プラスチック板を金型に吸い付けて成形する真空成形 私たちのまわりにある日用雑貨や玩具、電気部品、自動車部品などの材料として、熱(ねつ)可塑性(かそせい)プラスチックが使われていますが、その製造方法として「真空成形」が行われています。プラスチックの薄板を加熱してやわらかくした後に、金型に真空を密着させて成形する代表的なプラスチック成形方法の一つです。 使用されるプラスチック板の代表的なものは、ABS・AES・PMMA・PC・PP・PE・HIPS・PET・PVCなどがあって、最近では複合多層材料や印刷された材料が使用されることもあります。 真空成形では、まず材料のプラスチック板の両面をヒーターで加熱して、やわらかくしてから、金型にセットします。それから金型に加工されている小穴から、プラスチック板と金型の空間内の空気を瞬時に真空ポンプで真空排気して、プラスチック板を金型に密着させます。プラスチック板は、冷却すると固化するので、真空排気を止めて金型から外して、余分な部分をカットすれば製品のできあがりです。 真空成形は他の成形方法に比べて安価 真空成形の装置は、用途に応じて単発型と連続型があります。単発真空成形機は、「枚(まい)葉(よう)シート」と呼ばれる単板状の材料を使用し、多品種少量生産に向いています。 いっぽう連続成形機は、ロール状シートやフィルムを連続的に供給しながら、加熱、成形、冷却、離型、抜きの一連の工程を行い、トレー・パックなどの肉厚が薄い成形品や巻物の発泡シートにも対応できまて、大量生産が可能なんです。 真空成形は、成形圧力が低いため、金型材料に金属以外(樹脂製)の材料が使用でき、他の成形方法と比べて安くできるため、量産はもちろん、多品種少量生産にも適しているんです。 凸型や凹型の金型の選択によっては、成形品の内側・外側の寸法精度、表面のシャープさ・滑らかさ、深絞り、複合多層材料や、シルク印刷・グラビア印刷された材料の成形が可能で、機能性や、表面に装飾を加える加飾にも対応できるため、スーパーなどの食品容器として欠かせないトレー・パックから、プラスチック製のおもちゃ、電気部品、自動車部品など、とても幅広く利用されています。 用語解説 グラビア印刷写真製版による凹版印刷の一種。版の上の小さなくぼみの深さで、インキの厚みを変えることによって濃淡を表現する。もともと雑誌などで本文は活版印刷、絵や写真をグラビア印刷で行われていた時期があり、グラビアページと呼ばれていた。グラビアアイドルなどの呼び方はそのなごり。 アルバックホームページ
TOP-1.jpg

真空蒸留とは? Vol.13

真空ひばりの真空教室 Vol.13 はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪ 真空内で沸点の違いを利用する真空蒸留 Vol.12では凍結乾燥を真空中で行う凍結真空乾燥についてのお話でしたが、今回は真空下で行う蒸留のお話です。蒸留とは、2種類以上の混合した液状の物質から、蒸発速度の差を利用して分離精製する方法です。たとえば工業的に2種類以上の物質を反応させて別の物質を作り出す場合、原料と製品とが混合した状態になります。でもそれぞれの物質は、その蒸発速度の差を利用して、低い温度で早く蒸発する物質から順々に蒸発させることで、純度の高い物質を得ることができます。 大気圧では、水は100℃以下の低い温度で蒸発していますが、大気圧のように圧力の高い状態では、水の表面から飛び出した水分子は、気体分子に衝突して水面に戻されてしまいます。 ところが同じ温度でも真空下では気体分子が少ないため、水分子が衝突する回数が少ないために、空間に飛び出す量が多くなるので、盛んに蒸発します。だからそんな理由で、「圧力が低いほど沸点が低くなる」ということになります。 加熱による変質が少ないのが最大の特徴 大気圧では、沸点が高いため、不安定な物質は熱により分解や重合を起こしてしまい、蒸留による精製ができなくなってしまいます。そこで操作圧力を真空にすることで沸点が下がり、大気圧では不可能だった蒸留操作もできるようになります。 また、ビタミンなどの不安定な物質については、比較的低い温度で蒸留することによって、熱による変質が少ないことと、蒸留装置の内部は酸素が少ないことで、酸化による分解・重合を防ぐことができるんです。真空蒸留では、圧力は100~0.4Pa、温度は10~280℃程度が多く利用されている運転の条件です。 一つ付け加えると、そんな真空下での蒸発ですが、真空に接している表面からだけ起きるようになっています。なので、液の厚さが厚いと対流によって加熱部の液が、真空に接している表面に浮上して蒸発が起こるため、効率が悪くなってしまいます。そこで、真空蒸留には、処理液の厚さを薄くして、加熱温度と沸点の差を少なくする流下薄膜式蒸発機や遠心薄膜式蒸発機が利用されているんです。 [caption id="attachment_2354" align="aligncenter" width="781"] 真空蒸留の仕組み 用語解説 重合小さい分子が、互いに多数結合して巨大な分子、つまり高分子となることを重合という。 真空蒸留装置に興味がある方はこちらhttps://www.ulvac.co.jp/products/vacuum_distillation_system/index.html アルバックホームページ
TOP-1.jpg

凍結真空乾燥とは? Vol. 12

真空ひばりの真空教室 Vol. 12 はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪ 水分を凍らせて低圧で昇華させる凍結真空乾燥とは? 私はリゾットやおしることかが好きですが、お湯を注ぐだけで簡単に食べられるフリーズドライ食品が私たちの食事に広がりを見せています。今回はそんな食品や、薬品、医療分野などで活躍する凍結真空乾燥のお話です。 水分を含んだ物質から水分を蒸発させて取り除くことを乾燥といいますが、この水分を凍らせて乾燥することを凍結乾燥といいます。そう、私たちの国では、昔から豆腐を寒中に屋外で凍らせた後に乾燥させた凍り豆腐(高野豆腐)という食品があるのを知っているでしょ。あれは大気圧で凍結乾燥が用いられている例です。 水は、大気圧では100℃で沸騰して盛んに蒸発しますが、真空にするとこの沸騰する温度は下がります。そして、610Paより低い圧力では、水は液体でなく固体と気体でしか存在できなくなってしまいます。 こうした性質を利用したのが「凍結真空乾燥」です。この凍結真空乾燥という方法では、真空中で凍った状態のまま水分を蒸発(昇華)させることができるんです。 加熱しないために変質を防止できる 凍結真空乾燥は、加熱せずに低温のまま乾燥できるため、こんなメリットがあります。 ①熱による色の変化や、成分の変化など変性を防ぐ。②水分を極めて少なくすることで腐敗しにくく長期間保存できる。③形状が凍結時のままの状態で維持できる。④乾燥後の形状がスポンジ(多孔質)状となって、水やお湯を加えれば、短時間で元の状態に戻すことが可能。 どうですか、すごいでしょ。 凍結真空乾燥は、あらかじめ対象物を-40℃程度に凍結させて、真空容器を4~100Pa程度まで真空排気を行い、その後で約30~60℃程度加熱して乾燥させます。だから保存性や流通性にも優れているし、水やお湯を注ぐだけで元の食品に戻る利便性から、食品や医療品には凍結真空乾燥が、多く用いられるようになっているんです。 また、これとは別に「真空発泡」という方法があって、こちらはチョコレートの製造などに利用されています。あらかじめ細かい気泡を混ぜて溶かしたチョコレートを、減圧して真空容器に入れると、中の気泡が膨らんでスポンジ状になります。一口食べれば口の中でふわっと溶ける不思議な食感が受けて1980年代に流行したんですって。で、探してみたら復活していてまだそんなチョコレートがありました。エアインチョコレートで探してみてね。 凍結真空乾燥の仕組み 用語解説 昇華固体から液体を経ずに直接に気化して気体になる現象と、その逆に気体から直接に固定になる現象の両方をいう。 凍結真空乾燥装置に興味がある方はこちらhttps://www.ulvac.co.jp/products/freeze_drying_vacuum_drying_system/index.html アルバックホームページ

このサイトでは、お客様の利便性や利用状況の把握などのためにCookieを使用してアクセスデータを取得・利用しています。Cookieの使用に同意する場合は、
「同意しました」をクリックしてください。「個人情報保護方針」「Cookie Policy」をご確認ください。