サバの常温保存を可能にした「さばトバ」を開発

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真空食品乾燥技術「ゆるドライⓇ」で青森八戸を元気に!

「サバ」はマグロやアジなどと並んで世界的に消費量が多く、焼き魚や煮魚、干物やしめサバとして食べられています。栄養面では、動脈硬化や血栓などの予防に役立つDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった高度不飽和脂肪酸が多く含まれていることで有名ですね。ただ、青魚は身体に良いと思っていても、臭みがあったり、足が早かったりと苦手意識のある方もいらっしゃるかもしれません。本州最北端の青森八戸港は水温が低く、秋から冬にかけて水揚げされた「八戸前沖さば」は日本一脂がのっていると評価されています。身体に良いせっかくの脂ですが酸化しやすく、加工食品としても可能性が限られていました。

八戸港のほど近く、サバの弱点を克服して食べやすい商品を数多く開発・製造販売している水産加工食品会社の合同会社マルカネ(以下、マルカネ)。このたび常温保存できる「さばトバ」を開発し、この取り組みは「あおもり産学官金連携イノベーションアワード2017」でイノベーション特別賞を受賞しました。マルカネの代表 秋山兼男氏にお話を伺いました。

東日本大震災発生後、ゼロからのスタート日本最大級「館鼻岸壁朝市」で日本一の「八戸前沖サバ」

マルカネは、2011年3月11日に発生した東日本大震災からわずか4か月後にスタートしました。秋山兼男氏が当時勤めていた地元水産加工会社は震災の被害に遭い、職を失ってしまいました。ところがかねてからの取引先からの「八戸のサバがどうしても欲しい」という声をきっかけに、現工場長の大濱利得氏と会社設立を決意し、被災後間もない工場の片隅で包丁とまな板を手に水産加工食品の製造・販売を始めました。最初は日本最大級の日曜朝市「八戸館鼻岸壁(たてはながんぺき)朝市」に出店。来場者が毎週1万人以上にもなるこの朝市は、港町・八戸新湊の広大な岸壁に毎週日曜の早朝だけ開催され、全長800メートルにわたって300店以上の屋台が立ち並びます。この朝市が復興への大きな力となり自分もそれに貢献したいという想いで事業を始めました。直売所をJR八戸駅前の「朝市屋」と、本社に「マルカネキッチン」も構え、朝市とともにお客様の声を聴く重要な場としています。ここでの対話から新商品のアイデアがうまれることも。一部商品はオンライン販売も行っています。

マルカネの商品には「とろさば」や「八戸前沖さば」を使用しています。「とろさば」とは一般的に脂がたくさんのっているサバのことを指します。「八戸前沖さば」は、八戸前沖さばブランド推進協議会が認定した期間中に三陸沖以北の日本近海で漁獲し八戸港に水揚げされたサバのこと。大きいものでは600g 以上になるものあり日本一脂ののったサバと評価されています。八戸港は本州最北の漁場で9月に海水温が急激に低下するため脂肪分が多くなるのです。マルカネの食品工場は八戸港の目の前。水揚げされたサバをすぐに加工して、私たちの食卓に届けることができるのです。

さばトバの加工の様子

 

おいしさは人がつくる独自製法の「紙技Ⓡ」と「Just In Time」の精神

サバは身に含まれる水分が多いため、商品である焼きサバを包丁で切り分ける時に身がくずれ皮が剥がれてしまうというケースがありました。そこで、サバの切り身を一つずつキッチンペーパーで包み、独自に配合した粉状の調味料をまぶして一晩寝かせる「紙技Ⓡ*」を考案しました。こうすることで余分な水分が取り除かれ、身がしまり食感も増し、さらに一夜干しのように旨みが凝縮するのです。

マルカネは、料理人がお客様の目の前で調理してお出ししているという工程を工場で再現することを目指し、人の手で一つひとつ丁寧に加工しています。一見非効率にみえる製法ですが、デリケートなサバを少ないロットで短時間で加工していくので、ダメージが少なく不良率が下がるのでむしろ効率的です。「必要なものを、必要な時に、必要な量だけ生産する」という「Just In Time」の精神が、新鮮で安全な、お客様に満足のいく商品をお届けすることにつながっているのです。

マルカネはこれまで斬新で独創的な商品を次々と開発してきました。例えば、青森県産のにんにくを使った「サバーリック味噌」(八戸工業高校と共同開発)、地元農家の杏を使った「サバァンズ味噌」、程よい酸味と刺身のような味わいの「とろしめサバ」など。お客様の声を形にし、地元青森県産の食材にこだわってきた結果、様々な商品をうみ出してきました。

常温保存できる「さばトバ」真空食品乾燥技術「ゆるドライⓇ」でソフトな食感産学官金連携イノベーション

地域産業を活性化させようと岩手大学、八戸工業大学、アルバック東北㈱、㈱アルバックがマルカネと連携し、新しい商品「黄金さばトバ」を開発しました。その「黄金さばトバ」とは、アルバックの真空食品乾燥技術「ゆるドライⓇ」を活用し、既存の方法(天日干しや冷風温風乾燥、フリーズドライなど)では不可能だったソフトな食感を残したまま旨みを凝縮、かつ長期常温保存を両立させたサバの加工品です。広く知られている鮭トバは従来の方法でも加工が可能ですが、サバは脂質の豊かさゆえに酸化の弊害が如実に影響し実現できずにいました。手際よく三枚におろし骨を丁寧に取り除いたサバを、必要最低限の塩分の調味料で味付けして、真空装置の中に入れて乾燥させます。真空状態の特長である低温での乾燥ができるとともに脂質を酸化

「黄金さばトバ」の仕上げをするアルバックの真空食品乾燥技術「ゆるドライ®」

させず美味しさをそのままにでき、乾燥状態を制御することによって、しっとりとした食べやすい食感に仕上がるのです。流通にはこれまで冷凍や冷蔵保存が不可欠で「サバの生き腐れ」と呼ばれるほど鮮度の低下が著しいという欠点をもつサバが、衛生的でヘルシー、新食感と旨みを付加価値として常温流通可能な食品となったのです。

この取り組みは、「あおもり産学官金連携イノベーションアワード2017特別賞」を受賞しました。地域産業の活性化や震災後の東北復興への強い熱意によるもので、幅広い応用の可能性から、日本各地の特産品の流通域拡大が期待されます。秋山氏は「加工が難しいサバがここまでできれば、他の水産物にも幅広く応用できるはずです。果物など、青森の農産物にも活用して、多くの皆さまにもっと美味しさを届けたいと思います。」と夢を語りました。今後も挑戦は続きます。

合同会社マルカネ 代表 秋山兼男氏(左)と大濱利得工場長
(左から)マルカネキッチン(本社直売所)、八戸駅前横丁ユートリー(八戸地域地場産業振興センター)前にある直売所「朝市屋」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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