固体表面で起こる気体吸着と脱離

真空ひばりの真空教室 Vol. 8

はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。
この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪

固体の表面では気体吸着と脱離がずっと起こっている

真空ひばり(まそらひばり)真空教室の講師を努める27歳。今年の夏はダイビングに挑戦するぞ!

 Vol.7では、圧力と単分子層形成時間についてお話しましたが、今回は固体表面で起こる気体吸着と脱離、つまり固体の表面で、気体がくっついたり離れたりにしていることについてのお話です。

真空をつくろうとして空間に真空ポンプを排気していくと、気体分子が少なくなっているにもかかわらず、ある値以上に圧力が下がらないという現象が起こります。どこからか気体分子がやってくることがその原因なんです。

この場合、チャンバーと呼ばれる装置などに穴があって、外から侵入してくるというのは問題外ですが、それがないときでも圧力低下はある程度で頭打ちになってしまいます。このとき、気体分子はどこからやってくるのでしょうか。

実はこの分子は、もともと固体の表面に吸着していたものです。空間の気体分子を排出するにつれて、固体表面に吸着している気体分子が次々と脱離を始めて空間に出てくるんです。 

材質による吸着量を知ることが大切

真空をつくるときには、どうしても固体表面から気体分子が脱離してくるため、吸着している気体分子の量を考慮することは、真空装置をつくるうえでとても重要になります。なぜかというと、こうした分子が、どれくらい物質表面にくっついているかをある程度見積もらなければならないんです。

物質には、気体分子を吸着するエネルギーの大きいものと小さいものがあって、真空装置をつくるときには、なるべく吸着エネルギーの小さい材料を使う必要があるんです。

それから、排気ポンプの中には、気体分子をポンプの表面にくっつけて排気するタイプのものがあってその場合は分子をくっつけやすく、離れにくい材質を使うなどの工夫も必要です。

ところで、実際の装置で真空をつくるときには、幾何学的な表面積にくっついていると考えられるものより、多くの分子が排出されてきます。どうしてかというと、見た目の表面積と、気体から見た表面積に違いがあるからです。実際には1㎡の物質でも、気体分子レベルでみると無数の凸凹があって、本当の表面積はもっともっと大きくなるんです。これを「真表面積」といってその面積を知っておくことは、さらに重要なポイントになるんですよ。

気体吸着と脱離の関係

 

用語解説

吸着

気体と固体、液体と固体、気体と液体というように2つの相が接しているとき、気体または液体中の成分が、その接触面で相内部と異なる濃度を示す現象のこと。

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