「平均自由行程」って何だろう?

真空ひばりの真空教室 Vol.6

はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。
この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。
私の名前「真空ひばり」は、ボイルの法則で知られる科学者、ロバート・ボイルが、真空中では音が伝わらないことを知るために「ひばり」を使って実験したという逸話をもとにつけられた名前です。よろしくネ♪

気体分子がどれだけまっすぐ飛べるかを表す「平均自由行程」って何だろう?

Vol.5 圧力の差は、空間に存在する気体分子の数「分子密度」でわかるでは分子密度についてのお話をしました。
今回は気体中の熱や物質の移動において重要な「平均自由行程」についてお話します。
ある閉じられた空間の中には、気体分子が詰まっています。普通の状態では、気体分子はその場にじっとしていることはなくて、熱をもつとあっちこっちへ飛んでいきます。まっすぐ飛んでいったり、隣の分子にぶつかって方向を変えたり、またぶつかって曲がったり、という動きを繰り返します。

こうした動きをする気体分子が、どのくらいの距離をまっすぐ飛べるか、ということを表したものを「平均自由行程」といいます。ただし、実際にはその長さを測るわけではないんです。なぜなら、気体分子は目で見えないから。

真空ひばり(まそらひばり)真空教室の講師を努める27歳。3人兄弟の末っ子。兄と姉がいる。

そんなわけで、平均自由行程とは、「気体分子運動論」という学問的な取り扱いの中だけでいえる話。理論上の計算値として求められます。簡単に言うと、圧力が低いほど、つまり分子の数が少ないほど気体分子はまっすぐ飛べるので、平均自由行程は長くなるんです。

Vol.5で紹介した分子密度は、空間のある部分の数を見ていましたが、平均自由行程はもう少し具体的に、分子の動きそのものを見るため、真空を利用するときにはより現実に近い値として使われます。

真空装置の設計には、平均自由行程の長さを知ることが重要

平均自由行程は、具体的にどのくらいの長さになるんでしょう。通常の大気圧である105Paでの平均自由行程は700Å(オングストローム)=7.0×10-5㎜。短時間の間を考えてみると、分子はほとんど動かず、その場で振動している程度です。これが101Paとなると0.7㎜、10-1Paでは7㎝、10-2Paでは70㎝、10-3Paでは7mとなります。

真空中で物質に膜を付ける蒸着装置などの圧力は、普通10-2Pa~10-3Paを使っています。こうした真空装置の幅や高さはせいぜい1~2mほどで、平均自由行程が70㎝~7mもあれば、るつぼと呼ばれる耐熱性容器を飛び出した分子は、まっすぐ基板に飛んでいくことになります。このように平均自由行程は、実際の真空装置で何を行うかを考えたときに装置自体の設計にもかかわってくる重要な値になるんです。

用語解説

気体分子運動論
気体が多数の分子から構成されているという観点に立って、気体の示すいろいろな性質を理解しようとする理論。

圧力と平均自由行程の関係

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