真空を表す単位の圧力は、移り変わってきた

真空ひばりの真空教室 Vol. 3

はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。
この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪

真空を表す単位の圧力は、移り変わってきた

Vol.2では、「空間から気体分子を吸い出すことで真空をつくることができる」というお話をしました。真空とは空っぽの状態ではなく、存在する気体分子の量によることも何となくわかりましたか?

そこで、今回は真空を表す単位のお話です。
真空の程度は真空度と言いますが、「圧力」という物理的な量で表すようになっているんです。

圧力とは、単位面積あたりに加わる力のことで、国際(SI)単位では、1平方メートル(㎡)の面積につき1ニュートン(N)の「N/㎡」や、「 Pa(パスカル)」が使われています。

圧力の単位が使われ始めたのは17世紀頃。イタリアの物理学者でガリレオの弟子のトリチェリによる水銀柱を使った実験から、水銀柱の底面にかかる圧力を基準にした、「mmHg(ミリメートルエイチジー、または水銀柱ミリメートル)」が使われていました。
圧力を測定する圧力計が水銀柱を用いていたことに関連してなのか、この水銀柱をもとにした単位が長い間使用されていたんです。

真空ひばり(まそらひばり) 真空教室の講師を務める27歳。茅ケ崎生まれ茅ケ崎育ちだがサーフィンはやらない。
真空(まそら)ひばり 真空教室の講師を務める27歳。スポーツ・アウトドアが大好き。学生時代から山登りをやっている。

圧力を表す単位はmmHgTorrPa
1960年代になると「mmHg」に替わって「Torr(トル)」が使われるようになりました。
水銀柱の実験をしたトリチェリにちなんでつけられた単位です。mmHgとTorrは、厳密には定義が異なるため1/7,000,000だけ数字が異なりますが、実用的には1mmHgと1Torrは同じとして使っても問題はなかったようです。

ところが、ずっと長く使われてきたmmHgは新計量法の施行により1993年から、商取引に使用してはいけない単位に分類されてしまいました。そのため文書や論文では「国際(SI)単位」の「Pa」を使用することが奨励され、実際にPaで圧力を表すことが多くなっています。

Paは、低地と山頂で水銀柱の高さが異なることを示したフランスの数学・物理学者、パスカルにちなんで名づけられた単位です。ちなみにパスカルといえば、「密封された容器の中の静止流体の1点に圧力が加わるとどの地点でも圧力は等しくなる」という「パスカルの原理」をはじめ、気体や圧力の法則に関する業績をあげた人ですね。

日本では天気予報で、気圧を表記するときに、以前は「mbar(ミリバール)」を使っていましたが、現在では「hPa(ヘクトパスカル、1hPa=100Pa)」を使っているの、知ってた?

Barはセンチメートル・グラム・秒を基本としたCGS単位系のdyne/c㎡の圧力単位で106dyne/ c㎡=1barとなります。
今回は、「真空」は「圧力」の量で程度を表すということ、その「単位が時代とともに移り変わってきた」ということについてレクチャーしてみました。

用語解説

水銀柱

気圧とつりあう水銀柱の高さを測定することによって、水銀柱の圧力、すなわち気圧を算出することができる。

パスカルの原理