真空蒸留とは?

真空ひばりの真空教室 Vol.13

はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。
この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪

真空内で沸点の違いを利用する真空蒸留

真空ひばり(まそらひばり)真空教室の講師を務める27歳。この夏、花火に行かなかったのが心残り。

Vol.12では凍結乾燥を真空中で行う凍結真空乾燥についてのお話でしたが、今回は真空下で行う蒸留のお話です。蒸留とは、2種類以上の混合した液状の物質から、蒸発速度の差を利用して分離精製する方法です。たとえば工業的に2種類以上の物質を反応させて別の物質を作り出す場合、原料と製品とが混合した状態になります。でもそれぞれの物質は、その蒸発速度の差を利用して、低い温度で早く蒸発する物質から順々に蒸発させることで、純度の高い物質を得ることができます。

大気圧では、水は100℃以下の低い温度で蒸発していますが、大気圧のように圧力の高い状態では、水の表面から飛び出した水分子は、気体分子に衝突して水面に戻されてしまいます。

ところが同じ温度でも真空下では気体分子が少ないため、水分子が衝突する回数が少ないために、空間に飛び出す量が多くなるので、盛んに蒸発します。だからそんな理由で、「圧力が低いほど沸点が低くなる」ということになります。

加熱による変質が少ないのが最大の特徴

大気圧では、沸点が高いため、不安定な物質は熱により分解や重合を起こしてしまい、蒸留による精製ができなくなってしまいます。そこで操作圧力を真空にすることで沸点が下がり、大気圧では不可能だった蒸留操作もできるようになります。

また、ビタミンなどの不安定な物質については、比較的低い温度で蒸留することによって、熱による変質が少ないことと、蒸留装置の内部は酸素が少ないことで、酸化による分解・重合を防ぐことができるんです。真空蒸留では、圧力は100~0.4Pa、温度は10~280℃程度が多く利用されている運転の条件です。

一つ付け加えると、そんな真空下での蒸発ですが、真空に接している表面からだけ起きるようになっています。なので、液の厚さが厚いと対流によって加熱部の液が、真空に接している表面に浮上して蒸発が起こるため、効率が悪くなってしまいます。そこで、真空蒸留には、処理液の厚さを薄くして、加熱温度と沸点の差を少なくする流下薄膜式蒸発機や遠心薄膜式蒸発機が利用されているんです。

真空蒸留の仕組み

用語解説

重合
小さい分子が、互いに多数結合して巨大な分子、つまり高分子となることを重合という。

真空蒸留装置に興味がある方はこちら
https://www.ulvac.co.jp/products/vacuum_distillation_system/index.html

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