空間に何もない状態が「真空」ではないって、知ってた?

真空ひばりの真空教室 Vol.1

はじめまして! 真空(まそら)ひばりです。
この教室で皆さんに「真空」のことをいろいろレクチャーしていきます。よろしくネ♪

空間に何もない状態が「真空」ではないって、知ってた?

真空ひばり(まそらひばり) 真空教室の講師を務める27歳。茅ケ崎生まれ茅ケ崎育ちだがサーフィンはやらない。
真空ひばり(まそらひばり)
真空教室の講師を務める27歳。茅ケ崎生まれ茅ケ崎育ちだがサーフィンはやらない。

真空は、どのような状態をいうのかわかりますか?辞書では、「空気などの物質がまったくない空間」「何もない状態」っていうことになっていますが、では「まったく何もない空間」とはどのようなものなのでしょうか?

真空という概念は、意外に古くからあるんです。古代ギリシャのデモクリトスという名前の自然哲学者は、「原子(アトモス)」が真空という空虚な宇宙空間の中を運動していて、目に見えないくらい小さなさまざまな形と大きさをもったアトモスの運動の仕方で、いろいろな現象を説明できると唱えています。

これに対して、もう一人の哲学者、アリストテレスは、「自然は真空を嫌う」という「真空嫌悪説」を唱え、デモクリトスの考えに反対したことは有名な話です。知ってた?

「真にまったく何もない空間」を理解することの難しさは、昔も今も変わらないということかも知れませんね。

ところで、真空技術における真空とは、このように難しい話ではないんです。日本工業規格(JIS)では、「真空とは、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態で、圧力そのものではない」と定義しています。

感覚的に理解しやすい「減圧」や「低圧」という言葉を使うと、「大気より減圧された低圧状態が真空である」と定義することもできます。つまり、真空技術における真空とは、まったく何もない状態ではなく、「大気中の物質がある程度残留している低圧状態のことをいう」ということになります。

でも、そうなると混乱すると思うので、少しだけわかりやすく説明します。例えばエベレストなどの高山になると高いところではかなり空気が薄く、気圧は地表の3分の1しかない低圧状態にあるわけですが、普通は真空状態にあるとはいいませんよね。これはJISでいう「特定の空間」ではないからで、「真空」=「低圧」ではないんです。「真空」と「技術」が組み合わさった「真空技術」では、人が真空ポンプを使って作り出した低圧状態を「真空」であると考えることにしているんです。

だから、「真空とは空間に何もない状態ではない」ということ、わかりましたか?

用語解説

日本工業規格(JIS

1949年に制定・施行された工業標準化法に基づいて、日本工業標準調査会の審議を経て、経済産業大臣、国土交通大臣など主務大臣が定める国家規格。