プロジェクションマッピング協会 藤井事務局長インタビュー vol.2

人々に感動を与え続けるプロジェクションマッピング

工場内でのプロジェクションマッピングは、館内の展示をより充実されたものにするために使われている場合がほとんどだそうです。藤井さんも工場での投影に関して色々な経験があるものの、クリーンルームは前例がなく、アルバックが初めてでした。このプロジェクションマッピングを複数のイベントで投影したところ、「私たちに真空を理解させようという力に感動した」「アルバックという会社が何か良くわかった」「世界が広がったような気がした」というアンケート結果が出ました。老若男女問わず、受け入れられる映像エンターテイメントであるということが分かります。

プロジェクションマッピングの歴史

藤井:プロジェクションマッピングは、プロジェクターが開発された頃に、色々音楽などに合わせて、こうしたほうがいい、どこに映したらいい、という風に試行錯誤しながら使う人が数多く出てきて、自然発生的にその技術が広まったと言われています。早くには、1969年公開のアメリカのディズニーランドのホーンテッドマンションにプロジェクションマッピングが導入されています。まだプロジェクションマッピングなどという名前も認識もなく、世界中でも使われていない時期でした。

1983年公開の東京ディズニーランドのホーンテッドマンションにも、アメリカと同じく人の頭の彫刻に表情が動く映像を投影しています。このことはおそらく皆に知られていないのではないのでは、と藤井さんは話します。

2000年代に入って欧米を中心にプロジェクションマッピングという演出が広まりましたが、日本で初めてパブリックビューイングが開催されたのは、2010年8月に神奈川県の逗子小学校での開催でした。幅約50mの校舎に投影し、「夏休みの小学校には秘密がある」というタイトルで我々プロジェクションマッピング協会が企画・実施し、約1,000名が集まりました。

日本国内に広まったきっかけは、2012年9月、東京駅の丸の内駅舎外壁にプロジェクションマッピングをした、「TOKYO STATION VISION」という丸の内駅舎保存・復元完成記念イベントです。創建当時の姿に生まれ変わった駅舎(幅120m×高さ30m)をスクリーンにし、超高輝度プロジェクター46台を使用するという、当時は国内最大規模の試みでした。
【参考】「【公式】TOKYO STATION VISION / 東京駅 プロジェクションマッピング」(https://youtu.be/MQ1djdXuo7g

欧米のアート文化とプロジェクションマッピング

日本は高い映像技術を持っていますが、プロジェクションマッピング表現においては世界に遅れをとっています。欧米では日本よりもプロジェクションマッピングの広まりが早く、現在も世界中で一番活気があります。

藤井:欧米と日本では文化や国民性、環境に大きな違いがあり、アートに対する考え方が違うんです。オランダのゴッホ美術館など、欧米の美術館は高校生くらいまで無料で、館内で座ったり寝転がって絵を描いている子供もいますが、日本では尖っている物やペンは没収されてしまう。皆ただ立って静かに鑑賞していますよね。

欧米と日本ではアートに対する考え方が異なり、欧米ではアートが生活の中に溶け込んでいるのですね。また、映像を街中に投影する環境の違いについても、藤井さんは次のように話します。

藤井:日本は文化が東京から発信されています。でもその東京は明るいので、マッピングができないんです。特に中央区、渋谷区の条例は厳しい。地下に道路が通っていたらダメですし、道路を挟んで映像を投影できないんです。理由は混乱するから。道路がちょっとでも混雑したり、人が立ち止まったら危ない、という感覚です。抑止力が働いている東京都と、「どうぞどうぞ」という欧米とでは全然違いますよね。欧米は何かやる時は周りを暗くしましょう、と道路を暗くしてくれるんです。

ですが近年は日本でもプロジェクションマッピングができるように規制緩和されつつあります。渋谷は2020年までにニューヨークのタイムズスクエアのような「エンターテイメント特区」になる予定とのことです。

動く対象物にも?進化し続けるプロジェクションマッピング

藤井:最新の技術では、ラリーをしている卓球のボールや、なびくTシャツ、ダンスする人など、動いているものにぴったり張り付くように投影することができます。認識された物体が伸びたり、しわが寄ったりしても、投影された画像も同じようにぐにゃぐにゃと変形するんです。これはミラーで制御しています。医療などでは、人の体に投影したら、例えばがん細胞がどこにあるとか、ひっくり返しても見ることができるため、インターンシップなどで医学部が使い始めています。

このような最新の技術はまだ研究段階ですが、他にも複数の同じ形の物体を判別して投影したり、物体の上下や裏表を瞬時に認識したりなど、センサーを用いた最新のプロジェクションマッピング技術がどんどん出てきています。

【参考】「Dynamic projection mapping onto deforming non-rigid surface」(https://youtu.be/-bh1MHuA5jU

藤井:映像は何かを「伝える」ために作りますが、我々が作る映像空間で人々が自然とその世界に没入し、リアルとバーチャルの融合を楽しみ、時に感動して頂ければ、これに勝る喜びはありません。

今後はAIとプロジェクションマッピングのコラボレーション技術も出て来るかもしれません。映像技術の更なる進化に期待が寄せられています。

プロジェクションマッピング協会は様々な演出を手がけている

1.波佐見「光絵付」(長崎県)
2.1 minute projection mapping 2015 国際コンペティションin 「にいがた☆MINATOPIKA」(新潟県)
3.旭川雪まつり(北海道)
4.ウィンドゥディスプレイ/MIKIMOTO
5.日本テレビ『世界!極限アーティストBEST20』 髙橋大輔×プロジェクションマッピングのコラボ

==================================

<プロフィール>

一般財団法人プロジェクションマッピング協会
事務局長 藤井 秀樹(ふじい ひでき)

1968年(昭和43年)生まれ
神奈川県小田原市 出身
青山学院大学 国際政治経済学部 国際政治学科 卒塾講師、芸能プロダクションなどを経て現職。元々映像が好きであったが、友人が作ったセレモニー映像を見て感動したことをきっかけに、ほぼ独学で映像制作を始める。

2008年 公益社団法人日本青年会議所の全国会員大会小田原箱根大会の映像制作に携わり、その後映像の仕事に従事するようになる
2011年7月 プロジェクションマッピング協会を設立
2012年8月 プロジェクションマッピング協会を財団法人化

==================================
※この記事は、2018年1月に取材されたもので、内容は取材当時のものです。

アルバックホームページ
メールマガジン登録はこちら