GaNパワーデバイス

本研究は,文部科学省『省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発』事業JPJ005357ににおける名古屋大学殿の協力機関としての成果が含まれる。
本事業では,次世代半導体材料として有望な窒化ガリウム(GaN)に関して,材料創製からデバイス動作検証・システム応用までの研究開発を一体的に行う研究開発拠点を構築し,理論・シミュレーションも活用した基礎基盤研究を実施することにより,実用化に向けた研究開発を加速することを目的としている。

GaNパワーデバイスの低ダメージドライエッチング技術

近年の飛躍的な科学技術の進歩に伴い,エネルギー消費量は世界的にますます膨大になっている。一方で,エネルギー発電やガソリン自動車等から排出される二酸化炭素(CO2)や温室効果ガスが環境に与える影響は甚大であり,地球温暖化防止,省エネルギー化を目指した研究開発がとても重要になっており,喫緊の課題である。

GaNは,現在半導体パワーデバイスの主流となっているシリコン(Si)に比べて,バンドギャップエネルギー及び絶縁破壊電界強度が大きく,また電子移動度が高く,優れた基礎物性を有している。そのため,GaNは低損失かつ高耐圧パワーデバイスとして,特に環境負荷軽減となるハイブリッド電気自動車(HV)や電気自動車(EV)への応用が期待されている。

GaNを用いたパワーデバイスには,様々な素子構造の研究開発が進められている1 )。その中でも,デバイス構造の特徴から縦型トレンチゲートMetal-oxidesemiconductor field-effect transistors( MOSFETs)は,チップの小型化と高速スイッチングを可能にするデバイスとして注目されている。トレンチゲートという名称の通り,GaNウェーハ表面に,幅・深さが1 μm程度の溝(トレンチ)を形成することで,デバイスのオンオフのスイッチング動作を行うゲートとして機能させる。

トレンチは,エッチング工程により形成される。その側壁はデバイス動作時に反転層として電子が流れる経路となる。そのため,垂直性及び側壁表面の平坦性が良好なトレンチを形成するエッチング技術は,特にチャネル移動度というデバイス評価指標を向上させるため
の必須の技術となる。また,トレンチ形成の際に導入されるGaNへのダメージの低減も重要な課題である。

本報告では,GaNトレンチ形状制御と低ダメージ化に向けた最近のアルバックの取り組みと得られた成果を紹介する。

(※この記事は、2021年4月発行のテクニカルジャーナルMo.84に掲載されたものです。)

 

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文 献

1) T. Kachi: Jpn. J. Appl. Phys. 53, 100210( 2014).