自動車に使われるパワーデバイス

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昨今,車社会を取り巻く環境が変化してきている。これまでは,車の快適性や利便性が重要視されていた。しかし,CO2 による地球温暖化や高齢化による交通事故などのため,環境負荷低減や安全性が重要視されてきている。そのため,世界各国でplug-in hybrid electric vehicle(PHEV),electric vehicle(EV),full cell vehicle(FCV),等の開発が進められている。

その中で重要な車載部品が電池,モータをコントロールするpower control unit(PCU)などのパワーエレクトロニクスである。

(※この記事は、2019年9月発行のテクニカルジャーナルMo.83に掲載されたものです。)

パワーエレクトロニクスの応用とパワーデバイス

パワーエレクトロニクスとは,交流や直流を各機器に最適な形に変換する技術であり,Fig.1 のように自動車や家電など幅広く使用されている。自動車がガソリンエンジン車からPHEV,EV などに移行するに伴い,自動車に使われるパワーデバイスバッテリとモータ間の相互の電力変換を適正に行うためにPCU が用いられている。PCU にはIGBT が使われている。Metal oxide semiconductor field effect transistor(MOSFET)とinsulated gate bipolar transistor(IGBT)は,コストパフォーマンスが高く,機能,性能が良く駆動回路が簡単で壊れにくいため,パワーデバイスの主役として用いられている。
MOSFET は,小容量で高速でスイッチングする用途に適している。IGBT は,MOSFET のドレイン側にP層を追加したデバイス構造であり,大電流高耐圧のアプリケーションに適している。IGBT は,特性改善のために微細ゲート構造と薄ウェーハ化の技術開発が進んでいる。また,低コスト化のために薄ウェーハの大径化(200mm → 300mm)の適用も開始されている。

 

Fig.1 Current state of the power device applications

パワーデバイスの材料

パワーデバイスの基板として代表的な物はSi,SiC,GaN があげられる。 現在パワーデバイスの主流は,Siであり,Si-MOSFET, Si-IGBT 製品が多数使用されている。Si の大きな利点は,ウェーハコストが低いことである。Si ウェーハは,1 枚数千~ 数万円であるが,SiC ウェーハは数万円からと高く,GaN ウェーハに至っては,2 インチサイズで数十万と高価である。しかし,次世代のパワーデバイス材料として,Table 1のようにバンドギャップが大きく,絶縁耐圧が高く,また電子移動度が大きいSiC やGaN,ダイヤモンドが期待されている。この特徴を生かして,PCU の小型化,高効率化が可能であり,省スペース化,省エネルギー化が可能である。

Table 1 Physical property comparison of various semiconductor materials

 

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