車載MEMS センサ用機能性材料膜の形成

世界の自動車産業は2.3 兆ドル規模(2017 年)であり,今後,年平均成長率2.7% ほどで成長が続くとみられている。その中で,車載エレクトロニクスは,年平均成長率7% の1420 億ドル規模,そのうち車載センサは同13% の110 億ドル規模と見られており1, 2),車載センサの期待値が大きいことが伺える。自動車の進化を支えるものに制御システムの高性能化が挙げられる。制御システムにより,低燃費,低エミッション,安全性,快適性,利便性などが実現,付加されてきた。制御システムはElectronic ControlUnit(ECU),センサ,アクチュエータで構成され,センサは自動車の環境面,安全面における制御に不可欠な役割を果たしている。センサの搭載数は年々増えており,車種によるが100 個を超えるセンサが搭載されているとのことである3, 4)

センサ自体も変化してきており,従来はメカニカル式のものが主流であったが, Micro Electro Mechanical Systems(MEMS)技術が使われるようになり,高精度に計測できるようになった3)。MEMS は,マイクロメートル単位の微小な機械部品やセンサ,電子回路などを組み合わせた複合的な電子部品であり,微細加工技術により基板上に作り込んで製造する5)
これにより,小型でありながら,高性能で高信頼性のセンサの作製が可能となり,また,様々な改良によって高温等の過酷環境下でも使用可能なセンサが実用化されてきた6)
車載センサとしては,圧力,Tire Pressure Monitoring System(タイヤ空気圧監視システム,TPMS),化学,慣性,磁気,超音波,画像,レーダー,Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging(LiDAR)7)などのMEMS およびアクティブセンサなどが中心となっている。自動車メーカーはモビリティ社会の発展と地球環境維持を両立するため,自動運転
車および電気自動車(Electric Vehicle, EV)8)などの次世代自動車の技術開発を積極的に行っている9)。運転の自動化は,カメラ,レーザー,LiDAR などのイメージングおよび検出センサの開発を促進し,電動化は蓄電池管理のための電流センサと熱センサの開発を促進する。中でも,イメージング,レーザーおよびLiDARのような高付加価値のセンサモジュールの統合化に向けた試みが急拡大している10)

(※この記事は、2019年9月発行のテクニカルジャーナルMo.83に掲載されたものです。)

 

車載MEMS センサの応用製品

本項では車載MEMS センサを応用した最新の自動車用技術について,いくつかの事例を紹介する。

LiDAR 11, 12)

LiDAR は,光を使って物体検知や対象物までの距離を計測するものである。レーザー光を照射し,それが物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測し,物体までの距離や方向を測定できる。3 次元(3D)観測が可能で,電波よりもはるかに精密に,物体の存在する角度や形状を検知できる。Fig.1 に示すように、LiDAR は,レーザー光源とレーザー光を走査するためのMEMS ミラーから成り立っている。このMEMS ミラーには,小型化と高性能化への要求から圧電MEMS 技術が使われている。圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrxTi1-xO3, PZT)は,他の材料と比較して,同じ電圧を印加させた時に大きな振動を発生させることができるため,駆動するための機能性膜として採用されている。

Fig.1 Schematic dra wing of LiDAR and its
operation. LiDAR is mainly composed of
L a s e r , M E M S m i r r o r a n d d e t e c t o r .
Piezo-MEMS is used because of the demand
for a smaller and high-performance system.

Head-up display 13, 14)

Head-up display(HUD)は,情報を液晶パネルなどに表示し,それをミラーに反射させて,虚像としてフロントウィンドウに映し出すというものである。HUDを応用した拡張現実ナビゲーション(Augmented Reality ‒, AR -)は,車外前方の交通状況の光景を仮想情報(拡張)で補完することができるため,運転の安全性を高めることができる。ドライバーは,安全に運転するために必要な情報を目の前のディスプレイから得られるため,ドライバーの気が散ったり知覚に過度な負荷がかかったりするのを防ぐ役割を果たしている。
本デバイスにおいても,LiDAR と同様に,レーザー光を走査するため,MEMS ミラーが用いられている。

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文 献

1)T. Hattori : Mynavi News, Jun. 4, 2019( https://news.mynavi.jp/article/20190604-836702/).
2) J. Azémar : Sensing Technologies and Markets Trends in Automotive, Yole Développement, 2019 Flex Japan/MEMS & SENSORSENSORS Forum.
3) Y. Takeuchi : Hyomen Gijutsu 68, 392(2017).
4) T. Saito : Denso technical review 17, 213(2012).
5) e-Words(http://e-words.jp/w/MEMS.html).
6) R. Uzawa, M. Nishikawa and T. Tanaka : Fuji Denki giho 90, 242(2017).
7)Hamamatsu Photonics Web site, (https://www.hamamatsu.com/jp/ja/applications/li
dar/index.html).
8) Ministry of Economy, Trade and Industry Web site,(https://www.meti.go.jp/policy/automobile/evphv/what/ev.html).
9)T. Fujimura : PwC Japan Web site, Jan. 25, 2019(https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtle adership/automotive-insight/vol3.html#vol3-1).
10)T. Hattori : Mynavi News, Sep. 4, 2017( https://news.mynavi.jp/article/20170904-a176/).
11)Jidounten-lab Web site, Oct. 12, 2018(https://jidounten-lab.com/y_6506).
12)L. Ye, G. Zhang and Z. You : Sensors 17, 521(2017).
13)Y. Tanahashi, O. Kasono, T. Yanagisawa, T. Nomoto, I. Kikuchi and T. Ezuka : PIONEER R&D 22, 1( 2013).
14)S. Nakazono and S. Hiraoka : Panasonic Technical Journal 61, 23(2015).
15)Audi Technology Portal