大型ガラス基板によるマイクロ流路・マイクロストラクチャー加工

バイオ・ライフサイエンス分野におけるマイクロ流路・マイクロストラクチャー等のマイクロ化学チップ市場の拡大が期待されて来ており、それらの量産化に対応した技術開発が求められている。 そのソリューションとして、パネルサイズの大型ガラス基板によるマイクロ化学チップの高効率な加工技術の開発に取り組んできた。

以前の研究[1] ,[2]において、”C4NP”と呼ばれるハンダバンピングテクノロジーに用いられるウェットエッチング法によるガラスモールドについて報告を行っている。 ハンダバンプの型として使用されるガラスモールドには非常に精密なエッチングコントロールが要求され、φ300mmウェハサイズにおいてエッチング精度・uniformityを高いレベルで実現している。

本稿では、このエッチング技術をバイオ・ライフサイエンス関連アプリケーションへの応用を試み、さらに、マイクロブラストによるスルーホール、ダイレクトボンディングまでの加工を加え、大型ガラス基板によるマイクロ流路プレート作製に成功した事ついて報告する。

マイクロ流路プレートの試作に用いたガラス基板はマイクロ流路側・スルーホール側共に次の材料・サイズである。

  • Material: Corning EAGLE XG
  • Size: 330.2 mm x 355.6 mm (13″ x 14″) x 0.7 mm (thickness)

コーニング社製EAGLE XGはフラットパネルディスプレー用途で用いられる最も一般的なガラスのひとつであり、 Fusion法と呼ばれる製法にて製造され、クリーンで平坦な表面を持つ事を特徴としてる。 これらの基板はプロセス前に洗剤による洗浄、純水によるリンスを行っている。マイクロ流路プレートのプロセスフローをTable 1に示す。

マイクロ流路側基板は、DCインラインスパッタ装置を用いてエッチングマスクと用いるクロム膜が成膜される。 このクロム膜は耐フッ酸性を考慮した最適化が行われており、フッ酸エッチングによるエッチングピット発生を低減させる効果を持っている。 フォトリソグラフィーの手法を用いて、このクロム膜にマイクロ流路パターンを形成し、エッチング用マスクとした。

ディップ式エッチャーを用いて、フッ酸系エッチャントにより深さ40μm、幅100μmの流路をエッチングした。揺動と循環をコントロールする事で大型基板においても基板全面で高いuniformityを達成している。 さらに、エッチャント・エッチング条件等についても硝種・加工内容に合わせた最適化を行っている。 エッチング仕上がり結果として、エッチング深さのuniformity mapをFig 1に、ヒストグラムをFig 2に示す。 流路深さのバラツキは3σ = 3%(1.2μm)となっており、バラツキの小さい良好な結果を得ている。流路幅についても同様に3σ = 3% (2.5μm)を達成している。

スルーホール基板はマイクロブラスト法を用いて加工を行った。ブラスト用ドライフィルムレジストをマスク材とし、スルーホールパターンをフォトリソグラフィーにより形成している。ブラストノズルがパターンエリア全体をスキャンしながら、スルーホールを掘り進めて行く事で、大型基板でも均一な加工が可能となっている。ホール径をモニタリングし、目標値に達したところで加工をストップさせる。

加工が完了した流路基板・スルーホール基板はマスク材を剥離し、再洗浄を行う。接合面へのパーティクル付着は接合不良・ボイド等の欠陥の原因となるため、洗浄および接合プロセス時のパーティクル管理は重要なファクターである。アライメントマークを観察しながら、アライメントし、仮接合を行う。仮接合後、基板をベーク炉に入れ、加熱する事で恒久的な接合とする事が出来る。接着材等を用いない直接接合とする事で、不純物の混入がないクリーンな接合を実現している。完成したマイクロ流路基板をFig 3(基板全体)、Fig 4(チップ拡大)に示す。

マイクロ流路チップアレーを大型ガラス基板(330.2 x 355.6 mm)上に高精度で加工可能である事を実証し、そのプロセス開発に成功した。 今後市場拡大が期待されるマイクロ流路・マイクロストラクチャーチップの量産化に向けたソリューションとして提供して行く事を目指して行きます。

References

[1] “Lead Free Micro Bumping – Cost & Yield Challenges” K. Ruhmer, E. Hughlett, M. Ishizuka, T. Kojima, T. Asaka, B. Dang, A. Buchwalter, D.Shih, EPTC 2007, Singapore, December 2007.

[2] “Fine Pitch Lead Free Solder Bumping with C4NP” K. Ruhmer, E. Laine, M. Ishizuka, T. Kojima, T. Asaka, Semicon Europe Advanced Packaging Conference, Stuttgart, October 2007.

 

 

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