IoT社会を支えるアルバックの最先端テクノロジー ~ファインテック ジャパン レポート~

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IoT社会を支えるアルバックの最先端テクノロジー

真空技術のリーディングカンパニーであるアルバック(ULVAC)は、2016年4月6日~8日に東京ビッグサイトで開催された技術展示会「ファインテック ジャパン」のMEMS技術ゾーンに、最新の製品とテクノロジーを出展した。

※2016/4/11の マイナビニュースで紹介されました。
【特別企画】 IoT社会を支えるアルバックの最先端テクノロジー – ファインテック ジャパン

EMI
EMIシールドの説明パネル

アルバックは真空技術を軸に、タッチパネルや薄膜バッテリーなど、さまざまな電子部品に向けた優れた製造装置を提供している。ファインテックジャパンでは、電磁波シールド(EMIシールド)用の薄膜を製造するスパッタリング装置「SDHシリーズ」を初めて出展した。

スマートフォンに代表されるモバイル機器のプリント基板では、外部からのEMIに弱い半導体チップと、EMIを外部に放射する半導体チップが混載されていることが少なくない。このような場合、EMIを外部に放射する半導体チップの周囲を金属製のフタによって覆うことで、EMIをシールドすることが多い。

ただし金属製のフタを使うと、隣接する半導体チップとのすき間が大きくなるため、プリント基板全体を拡大しなければならない。また、プリント基板に実装する部品の“高さ”が、金属製のフタによって増加する。この手法は、高密度化を極めて重視するスマートフォンやモバイル機器などにとって望ましいとはいえない。そこで、金属製のフタを使わず、半導体チップ(パッケージ)の表面に金属の膜を付着させるタイプのEMIシールドが近年広がりをみせつつある。

EMIシールドの形成としては、半導体チップや電子部品などのパッケージの上部だけでなく、側面にも十分な厚みの膜を成膜することが必要とされる。また、半導体チップや電子部品などに対し、高温によるダメージを与えないようにスパッタリング工程での温度を低く抑える必要がある。

こうしたEMIシールドの成膜に求められる要求を満足しながら、非常に高い生産性を実現した設備が、アルバックのスパッタリング装置SDHシリーズであり、現在、各方面から多くの問合せがあるという。

装置主体の展示からテクノロジーを体感してもらう展示へ

アルバックは、今回のファインテックジャパンで従来とは違ったスタイルの展示を試みている。同社は製造装置メーカーなので、従来は製造装置を主に展示していた。製造装置の展示は、その装置のユーザーにとっては分かりやすい。一方で、製造装置のユーザーではなく、境界領域や周辺分野などを専門とする来場者にとっては、装置の展示だけでは理解が容易ではないという問題があった。

そこでアルバックは装置の展示ではなく、アルバックのテクノロジーを応用することでどのようなことが可能になるかを、具体的に示すことにした。それもIoT社会の実現に貢献するテクノロジーをデモンストレーションによって来場者に体感してもらうという、意欲的な展示である。

ファインテックジャパンでアルバックが展示したデモンストレーションは以下の4つだ。

(1)半導体や電子部品などを載せたプリント基板をまるごと封止して水中で動作
(2)薄膜型全固体電池(薄膜バッテリー)で温度センサーと無線通信回路を動かす
(3)トンネル磁気抵抗(TMR)素子によって磁気シールドなしで生体の微弱な磁気を測定
(4)温度によって電気抵抗値が急激に変化する機能性材料(サーミスタ)の実演

水中で携帯型オーディオプレーヤーが元気に動く

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絶縁性のポリマーで封止したオーディオプレーヤー

(1)のデモンストレーションは、複雑な形状をした立体の側面や裏側など、すみずみを絶縁性の薄膜で被覆することで液体や塵埃などから保護する技術を具体的に示したものだ。携帯型オーディオプレーヤーを構成するプリント基板やバッテリー、液晶パネルなどの部品を保護膜で封止し、水中に没してもプレーヤーを動作させていた。

水そのものは電気を通さない。ただし普通の水(水道水やペットボトルの水など)は不純物を含んでおり、不純物のイオンによって電気を良く通す。このため、プリント基板を始めとする電子部品を水中に入れると、電極同士が短絡し、電気回路が動かなくなる。

水中で電気回路を動かすためには、例えば、回路全体を絶縁性の薄膜で被覆する。絶縁性の薄膜を形成する方法として一般的なのは「気相法」である。ただし気相法には薄膜が成長する方向がほぼ上面だけになってしまうという弱点がある。凹凸のある複雑な形状だと、側面や裏面などには薄膜がほとんど成長しない。

そこで今回のデモンストレーションでは、「蒸着重合法」を利用して絶縁性ポリマーを成膜した。蒸着重合法は表面における化学反応を利用して薄膜を成長させるので、複雑な形状でも側面や裏面などを含めて均一な厚さで全体をコーティングできる。