研究活動の原動力は「面白い」と感じるキュリオシティ

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皮膚感覚のウェアラブルデバイス研究を成し遂げる研究者の資質とは?
東京大学 染谷隆夫教授

「半導体デバイスは硬いシリコン基板上につくるもの」、というのがひと昔前までの一般常識であった。2000 年代になると、曲がるエレクトロニクスの研究が活発になった。

ところがその多くは表示デバイスが中心。その中にあって、染谷隆夫教授(東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻)は、2004 年にロボット用人工皮膚「E-skin」を開発した。最近では人の皮膚に1 週間貼り付けても炎症反応を起こさない、超軽量のナノメッシュセンサーの開発に成功し、注目を浴びている。

(※この記事は、2018年6月発行の 広報誌No.68に掲載されたもので、内容は取材時のものです。)

理数系への進路は中学時代の数学教師との出会いから

――先生の少年時代は?

染谷:2つあります。一つは、中学校の時に非常に素晴らしい数学の先生に巡り合ったことです。その先生のおかげで数学が大変に好きに
なりました。もう一つは、私の父が工学系の研究者でしたので、小さいころからその影響を強く受けていたのでしょう。
ということで理数系に進学。大学に入った後も、素晴らしい先生方に恵まれて、そのご指導をいただき研究者としての道が開けました。

――ご趣味は?

染谷:中学では天文部に入り、夜に観察をし、翌日の昼に写真の現像をしていました。今でも趣味は写真です。研究室が始まって10年くらい、対外的に発表する写真のほとんどは自分で撮影しており、それらの一部は『TIME』誌の表紙をはじめ、著名な雑誌の表紙や巻頭に掲載されました。
高校の時は音楽部で合唱をやっていました。パートはバスで、大学に入ってからも続けていました。好きなジャンルはクラシックが中心ですが、アメリカ留学でジャズに触れたことがきっかけでジャズも好きになりました。

米国留学がきっかけで有機エレクトロニクスへの道へ

――今の研究に結びついていった経緯は?

染谷:大学では直接人の役に立つ工学部を選択しました。日本の基幹産業と言われる半導体に興味を持ち、電子工学を専攻しました。
半導体の微細加工の一つ、無機化合物半導体のナノ構造をつくって、そこに閉じ込められた電子の物性を調べる研究室で研鑽を積みました。その時の指導教員は多方面で著名な活躍をされている榊裕之教授(当時)でした。アルバックさんの装置との出会いもその研究室でした。

卒業後は、荒川泰彦教授の研究室でナノテクノロジーの光物性や工学物性の研究を始めました。今の研究とは直接結びついた研究ではありませんが、半導体の微細化という、いわゆる本流の研究をやっていました。
この微細化のトレンドは物理的な限界に近づいていましたが、研究を始めたばかりの自分にとっては、65歳の定年まで30年以上残っているわけです。もう少し違う、誰もやっていない新しい分野に挑戦したいと考えるようになりました。
2001年から約2年間、奨学金を得て米国に留学し、その留学先(ベル研究所)で巡り合ったのが有機半導体をトランジスタに応用する研究でした。これが有機エレクトロニクスとの出会いでした。

 

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